『ONEPIECE』映画の世界をボディビルで表現? 美と剛を司る新たなマッスルエンターテイナー【椎名拓也#4】
昨年10月に開催されたジュラシックカップで、一気にその名を広めた椎名拓也。3位という結果はもちろん、称賛を集めたのは、“美”と“剛”を融合させた、今大会だからこそ表現できたオリジナリティあふれる1分間のフリーポーズだった。 【インタビュー動画】実は深いフリーポーズへのこだわり。ふんわりな雰囲気の椎名が込める熱量
僕自身はエンターテイナー
「フリーポーズ、めちゃくちゃこだわりがあるんじゃないですか?」 そう問うと、返ってきたのは意外な答えだった。 「どっちかって言うと、あんまりやりたくないんですよ(笑)。フリーポーズが得意な人っていろいろと浮かぶと思うんですけど、自分の場合はいつも全然思いつかなくて。1か月くらい考えてるときもあって、案外それがストレスなんですよね。もちろんステージに立てばそこはボディビルダーにとって見せ場なので頑張りますが、あんまりたくさんフリーポーズもつくりたくないので、1年に1回にしたいんです(笑)」
根掘り葉掘り聞いていこうと思った矢先の、出鼻をくじかれるこの言葉…。ただし、しれっと彼がこぼした「1年に1回にしたいんです」というのは、非常に彼らしいとも言える。すなわちそれは、同じフリーポーズは2度とやらないという意思の裏返しでもある。 「それはありますね。期待して見てくれている人が多いですし、去年以下のフリーポーズはしたくない、必ず期待を超えるようなものを見せたい。僕自身はエンターテイナーだと思っているので、1年に何回かフリーポーズをするとしても、必ず違う曲を使うようにしています。やっぱり、お客さんを楽しませるのは一番大切だと思いますね」
「こういう面白さがあるんだ」みたいな
そんな彼がジュラシックカップで見せたフリーポーズは、彼の信念が詰め込まれたものと言ってもいいだろう。溺愛するアニメ『ONE PIECE』のオープニング曲「ウィーアー!」のアレンジバージョンであるゆったりとしたBGMでスタートすると、流れるような美しいポーズをとっていく。ところが半ばを過ぎたあたりで「ギュルギュルギュル」とDJのバックスピンで急停止すると、椎名自身も回転し、しゃがみ込む。右手を挙げてパチンと指をはじくと、曲調は一転。師である合戸孝二が日本選手権のフリーポーズで使用した勇ましいBGMへと切り替わり、表情を含めて“剛”の椎名が姿を見せたのであった。まさにアーティスティックな“作品”だ。 「もともとそういうのをやりたいなとは思っていて、今回は合戸さんからの推薦で出場したこともあり、椎名拓也×合戸孝二のフリーポーズができればと思っていました。イメージとしては、『ONE PIECE』の映画。『ONE PIECE FILM Z』って、全体のイメージとしてかっこよくて、以前の日本ジュニア選手権のときはあのような感じです。去年の夏に地元の『ミスあさひコンテスト』のゲストポーズをやったときは、『ONE PIECE FILM RED』というシリーズの中でも美しい感じの作品をイメージして、美を意識しました」