【衝撃の実話】壮絶すぎるセクハラ、パワハラの実態…元テレ東Pが明かす「地方局女子アナのリアル」
地方局でフリーアナウンサーとして働いていた人物にインタビュー取材
セクハラ、非常勤問題、働き方改革、正社員との格差…、元テレ東Pで桜美林大学芸術文化学群教授の田淵俊彦氏が、ある地方局の「派遣」アナウンサーに取材。地方局のアナウンサー事情・抱える問題をリアルにレポートしていただきます。 【思わず二度見!】カトパン、水ト、田中みな実…人気女子アナの「大胆すぎる私服ファッション」画像集 ―――――――――――――――――– 「女性アナ」と聞くと皆さんはどういうイメージを持つだろうか。「華やか」「派手」「ちゃらちゃらしている」など、どちらかと言うと〝浮ついた〟様子を思い浮かべるのではないだろうか。 かつては「美人」「高嶺の花」「奥ゆかしい」「汚れなく純粋」という〝近寄りがたい〟イメージがあったが、近年では局に属さずフリーとして活躍するアナウンサーも増え、「アナウンサー至上主義」の時代は終わりを告げた。いわゆる「アナウンサー戦国時代」に突入したのである。 なかでも地方局で働くアナウンサーたちの実態は、まさに「壮絶」という言葉が当てはまるほど「苛烈」かつ「過激」であり、「残酷」とすら言える。 では、なぜその実態が「苛烈」かつ「過激」で、それが「残酷」という言葉につながってしまうのか。 最初にはっきりと言ってしまおう。それは、地方局のフリーアナウンサーたちが「セクハラ」「パワハラ」といったハラスメントの嵐の中で闘いながら仕事をしているという事実があるからだ。 「いやいや、いまの時代にさすがにそれはないだろう」と思っているあなたは、甘い。その実情を知らない。 今回は、テレビの華やかな世界の裏側で繰り広げられているドロドロの人間模様をお伝えしよう。そこには、「男女平等」や「働き方改革」にはほど遠いテレビ局の旧態依然とした実態がある。「正社員と契約社員」の間には如実なまでの「格差」も存在している。それらは、コンプライアンスや企業ガバナンスが叫ばれるいまの時代においても、「地方局」という社会の底に「澱」のように沈殿しているのだ。 今回は、地方局でフリーアナウンサーとして働いていた人物に綿密なインタビュー取材をおこなうことで以上のようなことを証明してみたい。その話はあまりにもリアル過ぎて、「これを実名で公表したら、彼女に被害が及ぶのではないか」と恐れるほどだった。そのため、彼女を仮に直子さんと呼ぶことにして、その内容は忠実に記すことにする。直子さんは現在、33歳。結婚を機に上京してフリーのアナウンサーとして働いている。 直子さんがアナウンサーとして在職していたのは’15年から’18年までで、24歳から27歳にかけての3年間である。大学を卒業して、いったんは一般企業に就職をしたが、「どうしてもアナウンサーになりたい」と一念発起してアナウンススクールに通い、番組契約のフリーアナウンサーとして岡山の地方局に入職した。 ◆「何をされても、何を言われても我慢をするしかなかった」 直子さんの当時の給料は歩合制のような契約になっていた。取材に行く日は1万5千円、取材がなくて局内で作業する日は1万円と決められていた。賞与や家賃補助といった福利厚生はもちろんない。実家から通うことを止められ、会社の近くに住むことを強要されて一人暮らしだったため、生活に余裕はなかった。 アナウンサー志望の女性の場合、特に地方局においてはほとんどがアナウンススクールなどに通って、そのチャンスをつかもうと必死になっている。直子さんはラッキーなことにアナウンススクールの男性講師の推薦があって局の試験を受けることができたが、実際には夢を抱いたまま挫折してゆく女性も多いという。 地方局のフリーアナウンサーの世界がいかに「社会の縮図」のようなものなのかを検証するために、以下の2つの視点で分析を進めてゆくことにする。 ①「正社員と契約社員」間の「格差」について ②在京などの「キー局」と「地方局」との違いについて まず①の「正社員と契約社員」間の「格差」については、「立場が〝強い〟か〝弱い〟か」ということが最も大きな違いだ。局アナは立場が強い。もし何か気に食わないことがあったり、「パワハラ」「セクハラ」まがいのことを受けたら、すぐに上に苦情を述べたり、意見したりすることができる。だから、逆に男性側や上司もうかつに手を出さないし、訴えられることがないよう過剰なほどに気をつけている。 だが、その反面、フリーなどの契約社員は立場が弱い。当時の状況を「何をされても、何を言われても我慢をするしかなかった」と直子さんは言う。 ◆「地方はおかしい」 そして②についてだが、直子さんははっきりと断言した。 「地方はおかしい」 いまは東京で働いているが、「パワハラ」や「セクハラ」はまったくない。そのあまりもの違いに驚いたという。また地方局には「役員の不倫相手が衣装担当をしているなど、コネで仕事をしている人がスタッフにいるケースがごろごろある」。直子さんはその衣装さんに「おそらく嫌われていた」ので、番組に出演するときにいつもわざと変な服をあてがわれていた。もちろん、文句は言えない。よく視聴者から「直子さんの服のセンス、変わってますよね」と投書をもらったというから、視聴者が気がつくほど酷かったのだろう。 では、直子さんが「地方はおかしい」とまで断言することとは、具体的にどんなことなのだろうか。いよいよ本稿の核心に迫ってゆきたい。 それは、まず「パワハラ」だ。 アナウンサーは局の顔、番組の顔だ。だから、直子さんはほかの番組に出ることを禁じられていた。「違うキャラのイメージがついてしまうからだ」とディレクターからは説明されていたというが、歩合制の直子さんにとってはほかの仕事が入れられないのはつらい。フリー契約に対する明らかなパワハラではないのか。完全に優越的地位を利用した就業環境の妨害である。前述した、局の近くに一人暮らしを強いられていたというのも明らかなパワハラだ。 そんな「パワハラ」の温床になっているのが、「飲み会」だ。地方局の風習として、番組収録などが終わると必ず「飲み会」が入る。そしてそこにアナウンサーが呼ばれる。これも断れない「絶対参加」の案件だ。しかも、飲み会が一次会で終わることはない。二次会、三次会で夜中の2時、3時になっても翌朝は5時起きという生活が続く。 ◆局に推薦してくれた年配の男性講師も… そして、「パワハラ」の延長線上に「セクハラ」がある。 二次会が終わって店を出たエレベーターのなかでディレクターから「きみが好きだ」と迫られたり、後ろから抱きしめられたり手を握られたり、さらには無理やりキスをされそうになったりといったことは日常茶飯事だった。直子さんは、カメラマンと撮影に行ったロケの帰り道に「ドライブしよう」と言って拉致されそうになったこともある。 その根底には「お前なら大丈夫だろう」という相手の思惑があることは見え見えである。それが局アナとの差だ。 アナウンサー側も「誰かに言ったところで……」「毎日顔も合わせるし、気まずくなるだけだから」「私が我慢すればいいんだ」と自分に言い聞かせている。それは「誰にも守られていない」「頼る人もいない」立場だからなのである。 皆さんはこれまでの話を読んで、「それは昔の話なんじゃないか」とか「直子さんだけの極端な例じゃないか」と思っているかもしれない。しかし、そうではない。直子さんが勤めていたその局では、次々と女性アナウンサーがセクハラを理由に辞めてしまって、アナウンサー不足に陥っている。それはいま起こっている話だ。 地元でフリーアナウンサーをやっている直子さんの友人のところにも、「(うちの局に)帰ってきてくれないか」と頻繁に連絡が来る。その連絡を寄こしているのは、ほかの誰でもなくセクハラをしている張本人だというから、「倫理観がズレている」としか言いようがない。そもそも、彼らには「自分が加害当事者である」という意識がない。直子さんを局に推薦してくれた年配の男性講師も、孫ほども年が離れた教え子である直子さんの手に指を絡めてくるなどのセクハラを繰り返していた。思えば、局への推薦はそのことに耐えた直子さんへの「ご褒美」なのだ。 彼らに「罪の意識」はない。完全に一般常識や社会通念の感覚がマヒしているのである。これらの例からも、業界全体にハラスメント体質がはびこっているということは明白だ。 どうして地方局のフリーアナウンサーはこのような壮絶な「パワハラ」や「セクハラ」にさらされなければならないのだろうか。そういった問題の原因はどこにあるのだろうか。 それは地方ならではの「封建的な考え方」のせいだと指摘したい。 テレビ業界というのは、世間の一般的な企業に比べて社会常識という点において著しく遅れている。たとえば、男女参画ということにおいても’23年11月に発表された『民放テレビ局・ラジオ局女性割合調査報告』によれば’22年度の「在京の民放テレビ局女性割合」のキー局平均は25.4%しかない。’21年における日本の就業者に占める女性の割合は44.7%であるからその差は大きい。 それに輪をかけたような状況にあるのが、地方局である。地方ではいまだにテレビ局のステータスは高い。中央より企業や自治体との結びつきも強い。そういった状況のなかでは、「地方におけるトップ企業」という自負があるのも当然だろう。そしてその状況は封建的な地方においてなかなか崩れるものではない。そんな「社会的地位」が問題意識を薄れさせていると言えないだろうか。 在京テレビ局においては必至の達成事項である「働き方改革」においても、地方局の意識の低さは端的だ。直子さんによれば、「土日は勤務形態的には休みのはず」「でも、休めることはほぼない」という。地方局主催のイベントも多い。そのたびごとに呼び出され、ボランティア(無給)同然で働かされる。そこにはアナウンサーとしての「プライド」や「喜び」はない。 だが、彼女たちは生きてゆくために、また「アナウンサーであること」という夢をあきらめないために、そんな〝クソみたいな〟業務でも懸命にこなそうと頑張るのだ。 ◆「この子なら人に言わないだろう」「あの子なら大丈夫」… 今回の直子さんの話を聞いて、私はデジャブを感じた。 問題の構造が、まったく「ジャニーズ性加害」事件と同じだったからだ。「この子なら人に言わないだろう」「あの子なら大丈夫」。そうやって事件は隠蔽されてきた。そこには事務所の封建的で閉鎖的な体質があった。「この子たちを売れさせているのは自分だ」という驕りや自負がジャニー氏や事務所にはあった。 華やかなイメージのある「女性アナウンサー」という存在。地方局とはいえ、人気のある局アナであれば独立を発表すれば話題にもなり、「新しい門出」と祝福される。しかし、退社後は皆がフリーランスとして成功できるわけではない。その道は厳しい。しかし、その反面、「パワハラ」や「セクハラ」に耐え忍び、「クソ仕事」も笑顔でこなしてきたフリーアナウンサーは強い。根性もスキルも鍛えられている。そんな地方局出身のフリーアナにはさまざまなセカンドキャリアの可能性がある。 直子さんは結婚を機に上京し、フリーのアナウンサーとしてマイペースに仕事をしている。仲間のなかには、ほかの地方局に移って頑張っている人もいる。「社会の縮図」とも言えるほどさまざまな問題が山積みの地方局で苦難を乗り越えてきた女性たちは強い。めったなことで弱音を吐かない。 思えば、インタビューの中で直子さんは一度も「つらかった」「しんどかった」といったような弱音を口にすることはなかった。それどころか「大変なことだらけだったが、それでも育ててもらった会社には感謝している」とまで言い切る前向きな考えを持っていた。それは、どんな試練にも負けない「力」となる。 いまこそ、地方局の時代遅れで理不尽な仕打ちに耐えてきたフリーアナウンサーのエンパワーメントのときだ。今回の直子さんの「勇気ある告発」もその表れと言えるのではないだろうか。 彼女たちの前途が洋々たるものであることを祈りたい。 取材・文:田淵俊彦 桜美林大学芸術文化学群ビジュアル・アーツ専修教授。’64年兵庫県生まれ。慶應義塾大学法学部を卒業後、テレビ東京に入社。世界各地の秘境を訪ねるドキュメンタリーを手掛けて、訪れた国は100ヵ国以上。一方、社会派ドキュメンタリーの制作も意欲的に行い、「連合赤軍」「高齢初犯」「ストーカー加害者」などの難題にも挑む。ドラマのプロデュース作品も数多い。’23年3月にテレビ東京を退社。著書に『混沌時代の新・テレビ論』『弱者の勝利学 不利な条件を強みに変える〝テレ東流〟逆転発想の秘密』『発達障害と少年犯罪』『ストーカー加害者 私から、逃げてください』『秘境に学ぶ幸せのかたち』など。日本文藝家協会正会員、日本映像学会正会員、芸術科学会正会員、日本フードサービス学会正会員。映像を通じてさまざまな情報発信をする、株式会社35プロデュースを設立した。https://35produce.com/
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