〔海外〕2024年3月の災害を振り返る
2024年3月に発生した海外での大規模な災害、事故・事件の案件について振り返ります。 ※被害の内訳については、原則的にレスキューナウによる情報取りまとめ時のものです。それぞれの記事の最終更新日以降の状況については反映されていないことがあります。 ●3月 【自然災害】インドネシア・スマトラ島中部で洪水や土砂災害が発生 [被害]死者28人 行方不明者4人 2024年3月7日からインドネシア・スマトラ島中部にある西スマトラ州では豪雨が続き、州内の各地で洪水や鉄砲水、土砂災害が発生した。一連の気象災害に伴い、3月16日までに、死者28人、行方不明者4人が確認された。特に被害が激しかった州南部では25人が死亡した。また、避難した人は一時8万人にもなった。物的被害も大きく、住宅は3000戸以上が被害を受けたほか、40以上の橋が崩壊し、そのほかにも道路や農地などにも影響がでた。 3月はインドネシアでは雨季にあたる。そのため、今回のスマトラ島中部の豪雨災害以外にもジャワ島をはじめ国内各地で豪雨による洪水や土砂崩れなどの災害が相次いでいる。 【テロ】ロシア・モスクワ郊外のコンサートホールでテロ事件、140人以上が死亡 [被害]死者144人 負傷者551人 2024年3月22日20:00頃(日本時間3月23日02:00頃)、ロシアの首都モスクワ郊外のクラスノゴルスクにあるコンサートホール「クロッカス・シティ・ホール」に武装した集団が侵入した。当時はロックバンドのコンサートの開演前で、約6000人の観客がホール内にいたとみられる。侵入した武装集団は観客に向かって自動小銃で至近距離から無差別に銃撃を行ったあと、手投げ弾などを使ってホールを爆発・炎上させ、ホールの天井の一部が崩落した。この事件で、これまでに観客など144人が死亡し、551人が負傷した。 ロシア政府は今回の一連の事件をテロと断定し、逃走した武装集団の行方を捜査していたが、23日にロシア南西部のベラルーシとウクライナに国境を接するブリャンスク州で、実行犯4人を含む11人を拘束したと発表した。実行犯はいずれも中央アジアのタジキスタン出身で、アメリカなどはタジキスタンの隣国のアフガニスタンで政権を握るイスラム主義組織タリバンと対立するイラク・シリア・イスラム国(ISIS)のアフガニスタン分派「ISIS-K」の犯行との見方を示しており、ISISも事件後に自らの戦闘員による犯行と伝えている。その一方で、ロシア政府は今回のテロ事件にウクライナが関与していると主張しているが、ウクライナ側はこれを全面的に否定している。 モスクワ周辺で死者が100人を超えるような規模のテロ事件は、2002年10月に発生したロシアからの分離独立を主張するチェチェン共和国の武装勢力がモスクワの劇場を占拠し、人質など約130人が死亡した事件以来となる。 【事故】アメリカ東部で橋が崩落 大型コンテナ船が橋に衝突直後 [被害]死者2人 行方不明者6人 2024年3月26日01:28頃(日本時間同日14:28頃)、アメリカ東部メリーランド州ボルティモアで大型コンテナ船が橋の橋脚に衝突し、橋が崩落する事故が発生した。この事故により、8人が行方不明となり、うち2人が救助されたものの、6人は事故発生から18時間後に死亡したとみなされ、生存者救助活動は打ち切られた。その後の捜索活動で、27日に2人の遺体が車の中から収容された。 事故を起こしたのは、シンガポール船籍の大型コンテナ船「DALI」(約9万5000トン・9971TEU・2015年建造)で、デンマークの海運大手マースクがチャーターして運航していた。事故当時、同船はボルティモア港からスリランカのコロンボ港へ向けて出港した直後、電源系統を喪失し、救難信号を発信しながら航路から逸れ、橋梁に衝突した。救難信号を受けて橋は通行止めとなっていたが、橋の補修を行っていた作業員8人が崩落に巻き込まれた。 崩落した橋はフランシス・スコット・キー橋と呼ばれ、ボルティモア市街の南東部のパタプスコ川河口部に1977年に開通し、1日に3万5000人が通行する幹線道路。構造上の欠陥はなく、近年の安全検査でも問題がなかったとされている。 事故によりボルティモア港は一時閉鎖状態となり、4月1日に仮水路が開通したものの、4月初旬現在も大型船の出入りができない状況が続いている。同港は全米15位の貨物取扱量を誇り、特に自動車の取り扱いに強みを持つため、自動車産業を中心としたサプライチェーンへの影響が懸念されている。 アメリカ連邦政府は、橋のがれき撤去と再建に向けた緊急資金として6000万ドルの拠出を承認したほか、アメリカ国家運輸安全委員会(NTSB)がデータ・レコーダーを解析し、事故原因の調査を進めている。
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