【ヴィクトリアM】21年目の津村が男泣き!14番人気テンハッピーローズで大波乱V
<ヴィクトリアM>◇12日=東京◇G1◇芝1600メートル◇4歳上牝◇出走15頭 場内が仰天した-。ゴールの瞬間、単勝14番人気テンハッピーローズ(牝6、高柳大)の背中でデビュー21年目の津村明秀騎手(38)が歓喜のガッツポーズ。 【写真】天白オーナーに抱きついて喜ぶ津村騎手 レース史上最高となる単勝払戻金2万860円、G1レースでは史上4位の大波乱を起こした。勝ち時計は1分31秒8。人馬とも長い道のりの果ての初G1制覇を成し遂げた。 ◇ ◇ ◇ お待たせしました! そう伝えるように、テンハッピーローズの津村騎手がスタンドに向け、右手で1本指を立てた。デビュー21年目の中堅にエスコートされた14番人気の6歳牝馬は、ただひたすらに府中の直線で末脚を伸ばし続けた。残り200メートルを切ったところで先頭に立ち、あとは押し切るだけ。内で抵抗するフィアスプライドをねじ伏せ、後続の追い上げも封じた。殊勲の鞍上が「無我夢中でした。直線がすごく長く感じて、必死に追って」と鼓舞し続けた。念願かなった1本指は何度も天に突き上げられた。「絶対にチャンスはあると思って乗った。馬が頑張ってくれた。本当に良かった」とたたえた。 思わず声が震えた。ゴーグルの下には涙も見えた。JRA・G1は47回の苦汁をなめてきた。2着は3回。それだけに喜びは計り知れない。「勝てないかもしれないという思いはありましたけど、それでも諦めちゃだめだと毎年毎年思って、何とかG1レースに乗れるように、たどり着けるようにしてきました」。 G1の勲章を手に入れたのは騎手だけではない。テンハッピーローズは6歳でG1初挑戦初勝利となった。昨夏新潟の朱鷺Sで賞金加算に成功し、厩舎と馬と騎手が一丸になって、このヴィクトリアMを目標にしてきた。2歳時には白毛の名牝ソダシ、サトノレイナス、ファインルージュたちとともに走った素質馬。騎手と同様に遅咲きとなったが、最高の結果が待っていた。 「また、さらに具合が良くなってくると思います。これから相手も強くなりますが、しまいは確実なので頑張ってほしい。これで終わりじゃなくて、まだまださっきの声援を浴びたい。また勝ちたい」。ともに戦い抜いたパートナーに伝わるように言葉を続けた。津村明秀とテンハッピーローズ。14番人気の伏兵ではなく、次からはG1ウイナーとして、新たな戦いに挑んでいく。【舟元祐二】 ◆テンハッピーローズ▽父 エピファネイア▽母 フェータルローズ(タニノギムレット)▽牝6▽馬主 天白泰司▽調教師 高柳大輔(栗東)▽生産者 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 24戦6勝▽総獲得賞金 2億6885万3000円▽馬名の由来 冠名+幸福+母名の一部 ◇ ◇ ◇ 高柳大師はJRAの芝G1初制覇となった。前週の4日に米国で行われたケンタッキーダービーではテーオーパスワード(牡3)を送り出し、5着と健闘。厩舎に追い風が吹いている。テンハッピーローズについて高柳大師は「長い年月をかけてここまで進めてきた。ペースは流れていたし、いいところにつけていた。最後は声を出して喜びましたね。人気はなかったけど、力を示すことができて良かった」と好走を喜んだ。