中国広東省深圳市の日本人学校に通っていた男子児童が刺殺された事件現場付近

【北京＝三塚聖平】中国広東省深圳（しんせん）市で日本人の男子児童（10）が刺殺された事件から18日で1カ月となった。男児が通っていた日本人学校は14日から登校を再開したが動揺は収まっていない。中国側が動機や背景の説明に応じておらず、安全対策には難しさも指摘されている。 【写真】登校中に刺殺された男子児童が通っていた日本人学校付近を警戒する治安当局者 深圳日本人学校は、臨時休校とオンライン授業を経て約1カ月ぶりに対面授業を再開した。外交筋は、学校関係者が再開にあたり「センシティブ（敏感）になっている」と指摘する。 事件前は在校生約260人の半数以上が徒歩通学だったが、全員がバスや車で登校可能な態勢を敷いた。スクールバスの路線や停車場所を増やし、タクシーを配車できるシステムを構築。バス車内のほか、バス停にも警備員を配置した。 ただ、これらは「過渡期の通学態勢」（外交筋）という位置付けだ。基本的に通学は保護者の責任との原則があり、将来的に日本人学校に通う子供を持つ家庭の負担が増すことが見込まれる。 中国に進出する日系企業団体、中国日本商会は18日発表の談話で「引き続き学校の安全を実現する諸施策と、それを実現する予算の確保と実行を期待する」と表明した。 事件現場は日本人学校から約200メートル離れた路上で、被害の様子を目撃した学校関係者もいたといい、文部科学省はスクールカウンセラーを派遣して心のケアを行っている。不安を訴える在校生のためにオンラインでも授業を受けられる仕組みを併用しているが、利用者は少なくないようだ。 中国側は、日本側が求めている動機などに関して追加情報を出していない。外交筋は「詳細が分からないと対策が立てにくい」と吐露する。6月にも江蘇省蘇州市で日本人母子が切り付けられる事件が起きているが、同事件についても詳細は明らかになっていない。 在留邦人からは「詳細が分からない以上、日本人が狙われているという恐ろしさがある」という声が上がる。深圳の事件が起きたのは満州事変の発端となった柳条湖事件の発生日という「敏感な日」だった。12月13日には日中戦争時の「南京事件」の追悼日が控え、在留邦人の緊張が再び高まるのは必至だ。