為替介入も辞さない構えの日本の通貨当局、次の試金石は米雇用統計
日本政府は22年、152円を前に総額9兆円規模の円買い介入を実施し、円安阻止に断固たる姿勢を示した。通貨当局は、特定の水準を維持するためではなく、過度の変動を抑えるためと介入を正当化したが、これは国際社会の為替政策の考え方において許容されるとの認識だ。
円安は、日本の大手輸出企業やグローバルに事業を展開する企業の収益を過去最高水準に押し上げる要因となり、外国人にとって日本を手頃な旅行先に変えた。一方、原材料コストやエネルギー価格を押し上げることで、インフレ率はここ数十年で最も高い水準になっており、輸入業者や内需企業、家計は圧迫されている。
わずか12年で円の価値は約半分になった。ドルベースの1人当たり国内総生産(GDP)がこの20年余りで最低水準となる中、政策当局者は円安がさらに進まないことを望んでいるだろう。
日銀の利上げにより円安圧力がある程度弱まることが期待されたものの、植田和男総裁が緩和的な金融環境が当面続くとの見通しを示したことで、追加利上げはまだ先だとの見方が投資家の間で広がった。
アナリストらは日米の金利差に着目している。日銀は政策金利の誘導目標レンジ上限を0.1%に設定したが、FRBの5.5%を大きく下回る水準だ。
歴史的利上げでも円を救えぬ4つの理由、金利や変動率の低空飛行響く
次回の日銀会合を数週間後に控え、日本の通貨政策の司令塔である神田真人財務官は投機的な動きを抑えるために最前線に立つだろう。神田氏は22年の為替介入を指揮した。日本のソーシャルメディアでは「神田シーリング(天井)」として152円水準に注目が集まっている。
神田財務官は3月29日のインタビューで、日米のインフレ率の動向や見通し、金融政策、金利の方向性といったファンダメンタルズに照らすと、足元の急速な円安には「強い違和感を覚えざるを得ない」と指摘。「今の円安の動きというのは逆方向だろうと思っている人が恐らくほとんどだと思う」と語っていた。