藤井聡太の歯列矯正にひふみんが「ちょっと心配」と語る理由
あまたの偉業を重ねながらも、いまだ齢21。そんな将棋の藤井聡太八冠の「口元」に目下、視線が集まっているという。若き天才棋士が選んだ新たな一手を、“あの人”はどう解説するだろうか。 【写真を見る】「歯を入れると頭が働かなくなった」という加藤一二三氏 ***
その文言がSNS上に飛び交ったのは去る2月23日の夜。「徹子の部屋」(テレビ朝日系)の特番に出演した藤井八冠がにっこりと笑ったときだった。 〈矯正している!〉 画面に映った歯の表面にワイヤー器具がついており、〈今まで気づかなかった〉〈私も矯正治療中なので親近感〉などと大騒ぎ。〈歪んだ前歯で見た目の印象が良くなかったから好手だ〉といった肯定的な意見のほか、〈痛みや不快感がつきものだから悪手だ〉と対局への懸念を示す書き込みも相次いだのだった。
「パフォーマンスに影響を与えることはない」
「令和の天才」の奇手に、ネット上は今なおにぎわいをみせている。将棋連盟元理事の田丸昇九段(73)は、 「以前は、棋士を取り上げるのは新聞や専門誌くらいでしたね」 と、苦笑いしつつ、 「実績は既に大ベテラン級ですが、まだ21歳。常に人目にさらされている存在ですから……」 全八冠を独占する藤井は現在、56年ぶりとなる「年度勝率記録」更新を見据えている。歯列矯正の影響が気になるところだが、 「対局時に歯痛などがあったら落ち着けないでしょうが、八冠のようなトップ棋士はそのことさえも忘れてしまうくらいの集中力を持っているものです」(同) 実際、矯正歯科医に尋ねても、 「治療には多少の痛みや違和感は伴いますが、主治医による適切な処置があれば、パフォーマンスに影響を与えるまでには至らないでしょう」(医療法人イースマイル国際矯正歯科・有本博英理事長) とのことだから、さらなる躍進に期待が膨らむのだ。
人生最大の危機
そんな中、 「ちょっと心配です」 と言うのは、「ひふみん」の愛称でおなじみの加藤一二三九段(84)だ。 藤井は3月10日放映のNHK杯準決勝戦で羽生善治九段に勝ち、今年度の勝率も依然、史上最高記録を上回ったまま。「しばらくは藤井1強時代が続くだろう」との声も聞こえてくる。なのに、なぜ不安視するのだろうか。 「藤井さんの将棋は相も変わらずの絶好調ですが、棋士にとって歯はとても大事なんです」 そう断じながら、前歯を欠いた元名人は自身の現役時代を振り返る。 「長考に長考を重ねる私は無意識のうちに歯を食いしばっちゃう。それで歯を失ったの。20年も前の話ですよ。その後、歯を入れたんだけれども、どうにも頭が働かなくなっちゃった」 この時が「人生最大の危機」だったという。 「でも、入れた歯を抜いてもらったら、あらびっくり。以前のように自分でも感動を覚える一手を指せるようになったの」(同) その体験ゆえ、「天才」の歯列矯正という新手を案じているとのことだ。 となれば、さすがの藤井の盤上にも黄信号がともるのだろうか。 引退から7年がたった今も、「将棋研究のために歯を入れない」と言い切るひふみんは、 「とはいえ、あの慎重な藤井さんが熟慮の末に始めたわけですから、今はつつがなく治療が終わることを願っております」
「週刊新潮」2024年3月21日号 掲載
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