【フォトドキュメント】井上尚弥・世界スーパーバンタム級4団体統一王者「残酷な拳」と「天使の素顔」
スーパーバンタムのひとつ上、フェザー級を主戦場にプロ17戦10勝6KO7敗。 グローブを吊るした’99年に、山口裕朗(ひろあき)氏は写真家に転向した。 以来、経験者の強み″予測力″を武器に、数々のボクサーとファインダー越しに対峙。 【画像】元プロボクサー写真家が魅せられた「井上尚弥」ベストショット…!(写真12枚) 井上と知り合ったのは’12年、当初の認識は「強いボクサーのひとり」だった。 いまだ瞼に焼き付いている、あの壮絶KO劇を目の当たりにするまでは――。 ’14年12月30日に「モンスターが誕生した」と写真家の山口裕朗氏は言う。 「デビュー前から井上選手を撮っていましたが、強いけど″モンスター″という印象ではなかった。ライトフライという階級が合ってなかったのだと思います」 そこから一気に2階級上げて挑んだのが、WBOスーパーフライ級王者のオマール・ナルバエス(48)だった。 「ファインダー越しに見えたのは衝撃の光景でした。不倒王者と呼ばれたナルバエスが1R開始早々にダウン。左ボディブローであの誇り高いチャンピオンが戦意喪失するほど、圧倒したのです」 これ以降、ほぼ全試合でモンスターは対戦相手をKOしている。 「井上選手はパワー、スピード、正確性、ディフェンスとすべての能力が超ハイレベル。それでいて、ボクシングIQも高い。たとえば、ノニト・ドネア(41)との1戦目。井上選手は試合序盤に右眼窩底骨折という重傷を負いました。モノが二重に見え、距離感が掴めなくなる大ピンチを、ガードを上げて右目を隠すことで乗り切った。聞けば、『かつてドネアが同じ方法で眼窩底骨折の危機を切り抜けていた』と言う。資料映像から得た引き出しを、咄嗟に使っていたのです」 完璧なパンチでも、察知されれば倒せない。IQはそこでも力を発揮する。 「相手を観察してクセを読み、どの攻撃パターンが有効かを探り、察知した瞬間に迷いなく襲い掛かる――シャドウなど普段の練習から予期せぬタイミング、角度でパンチを打つための研究、鍛錬を欠かさないからこそできる芸当です」 才能と努力の融合が残酷な拳の正体だ。 2023年12月26日 vs.マーロン・タパレス(世界スーパーバンタム級4団体王座統一戦) 『FRIDAY』2024年2月23日号より
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