「攻めた訳詞のミュージカルを」ミュージカル『ライオン』SING&TALKイベントに成河登壇
ギター5本と役者ひとりで紡ぐミュージカル『ライオン』。今年12月に上演されるこの公演の「SING&TALKイベント」が、世界ライオンの日とされる8月10日、東京のテイラー・ギターArtist Loungeにて開催された。 【全ての写真】ミュージカル『ライオン』SING&TALKイベント テイラー・アーティストのライブやテイラー・ギター購入予定者以外は入ることのできないArtist Loungeが観客で埋め尽くされる。開場時間からステージでざっくばらんに話している成河の姿や、ステージとの距離の近さに戸惑う観客たち。成河はフランクに「こんにちは」「だいじょうぶですよ、僕のほうが緊張してるんで」と話しかける。 全曲ギター弾き語りのミュージカル『ライオン』に挑むにあたり、半年前から曲の訳詞とギターの練習を続けてきた成河。「今日は人前で弾く練習をさせてください」と、まず作中の曲「おもちゃのバンジョー」「嵐の越え方」の2曲を披露。みごとな指さばきと歌声に、客席からは大きな拍手と歓声が上がった。 同席したギター演奏指導・監修のyas nakajima(中嶋康孝)は、「半年前に初めて会ってからすごく練習を頑張ってきた」と成河の努力を称える。『ライオン』は、ミュージシャンであるベンジャミン・ショイヤー自身の体験をもとにした、父と息子の物語。息子が父にギターを教えてもらった10歳から、30歳になるまでを描くもの。もともと、ショイヤーが自分で作った曲を演奏していたため、完成された楽譜はなく、nakajimaが映像や音源から半年をかけてギター譜を起こしたのだという。 ここからは今作の翻訳・訳詞を担当するロンドン在住の宮野つくりがリモートで参加し、訳詞の難しさについて語り合う。宮野の訳詞を受け取った成河が手を入れたり、作り変えたりして、その訳詞にまた宮野が意見する、というやりとりをもとに、2~3週間に一度、毎回2~3時間をかけて訳詞の検討を行っているらしい。今作の歌詞について「全体を通して英語ならではの素敵な表現、韻、いろんな工夫が散りばめられている。何を優先させるかが難しい」と宮野。宮野と重ねている率直なディスカッションを「人に自慢できる、誇れる作業をしているな」と感じているという成河。 ここで、成河が先ほど演奏した「おもちゃのバンジョー」について、大事な「My Father」の訳詞のイントネーションを大事にしていることを説明。ミュージカルの訳詞はメロディを守るために日本語が犠牲になりがちだが、「『翻訳の歌』でなく『日本語の歌』にしたい」という思いで「かなり攻めた取り組みをしている」ことを解説した。 さらに成河は元となる英語の歌詞、宮野が訳した最初の歌詞、そして検討したもう一案の歌詞をひと節アカペラで歌い上げる。英語の韻をどう活かすかなど、さまざまな角度から丁寧に訳詞を行っていることを知った観客からは感嘆の声が漏れた。 たっぷり一時間にわたり、成河の熱のこもったトークが繰り広げられ、最後は観客が記者のようにカメラを構えてフォトセッション。ギターを持ってポーズを取る成河は「慣れない」と笑いながら「呼吸をするようにギターが弾けるようになりたい」と目標を口にしてイベントは幕を閉じた。 演技はもちろんのこと、今回披露された訳詞、そして演奏のみならず、会場の観客席の作りにも成河の意見が反映されているというミュージカル『ライオン』。4か月後、どのような作品が観られるのか、期待が募る。 取材・文:釣木文恵 <公演情報> ミュージカル『ライオン』 公演期間:2024年12月19日(木)~12月23日(月) 会場:品川プリンスホテル クラブeX