バラエティと女優の両軸で活躍!共感必至の「コタツがない家」で主演、小池栄子の優れたバランス力
小池栄子が主演を務める連続ドラマ「コタツがない家」(日本テレビ系/毎週水曜日夜10時放送)の最終回が20日に放送された。本作は、一家の大黒柱でやり手のウエディングプランナー、深堀万里江が3人のダメ男を養う、笑って泣ける共感必至のネオ・ホームコメディだ。脚本を手掛けるのは、「俺の話は長い」で第38回向田邦子賞を受賞した金子茂樹。同ドラマのスタッフが再集結し、万里江とダメ男たちが織り成すてんやわんやの日常と、古い常識に縛られない“新しい家族”の姿を映しだしている。 【写真を見る】ついにフィナーレ!「こたつがない家」でヒロインが養うダメ男その1はこの人(夫)! 万里江の夫、悠作(吉岡秀隆)は廃業寸前の漫画家。11年半もの間フリーター状態なのもさほど気にせず飄々としている。息子の順基(作間龍斗)は高校3年生。ただいま進路について迷走中で、大学の推薦入学を自らダメにしてしまい万里江とひと悶着も。そして万里江の父親である山神達男(小林薫)は、妻の清美(高橋惠子)に熟年離婚されたヘンクツで頑固な“昭和の男”。詐欺にあい財産を失ったことで深堀家に身を寄せているが、実は700万円の貯金のほか衝撃の過去があることが発覚する。会社社長でもある万里江は、仕事をバリバリとこなしつつ、こんなダメ男3人衆の面倒を一手に引き受けている。 この頼りがいのある姉御肌タイプの万里江という役柄は、どこか相通じるイメージのある小池にぴったりだ。彼女はただいまバラエティに女優にと垣根を超えて活躍中。ということで女優、小池栄子の優れたバランス力がうかがえる出演作を紹介したい。 ■コメディエンヌぶりを披露!『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』『記憶にございません!』 バラエティ番組では鋭いツッコミやユーモアあふれる発言で場を大いに盛り上げている小池。お笑いスキルの高さには定評のある彼女がコメディエンヌぶりを披露しているのが『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』(19)だ。この作品は『銀河鉄道の父』(23)の成島出監督がつむぐ人生喜劇。太宰治未完の遺作「グッドバイ」をケラリーノ・サンドロヴィッチが戯曲化し、その舞台を映画化した。ダメダメなのになぜか女性にはモテる田島を大泉洋が演じ、田島が愛人と別れるために雇った妻のフリをするキヌ子を小池が演じた。小池は金にがめつく大喰らいのキヌ子を、だみ声も交えながらパワフルに体現。化粧っけのない素朴な姿から田島の妻としての艶やかなドレス姿まで、小池の変貌ぶりも楽しめる。 また、三谷幸喜が監督&脚本を務めた『記憶にございません!』(19)は、記憶を失くした総理大臣が巻き起こすドタバタを描いた政界コメディ。中井貴一が、一般市民の投げた石に当たり政治家だったことを忘れてしまった元悪徳総理の黒田啓介に扮し、小池はそんな総理の秘書である番場のぞみを演じた。番場はスーツを颯爽と着こなす真面目でデキる事務秘書官ながら、時としてその対応能力が高すぎることで絶妙な笑いを生んでいた。 ■まさに怪演!女優としてのすごさがわかる『接吻』『八日目の蝉』 続いて小池が女優としての力量を見せつけた作品が、豊川悦司と共演した『接吻』(08)だ。28歳の独身OL、遠藤京子(小池)は孤独な日々を過ごしていたが、ある時、一家斬殺事件の容疑者である坂口秋生(豊川)が逮捕され、連行されていくのをニュース番組の中継で見かける。テレビカメラに向かつて笑みを浮かべる坂口に魅了された京子はすべてを捨ててのめり込み、ついには獄中にいる彼と結婚してしまう。小池は京子が抱える孤独や狂気を鬼気迫る演技で体現。その演技は高く評価され、第18回日本映画批評家大賞の主演女優賞を受賞したほか、数々の賞に輝いた。 また怪演ということでは、『グッドバイ~嘘からはじまる人生喜劇~』の成島出監督がメガホンをとった『八日目の蝉』で、小池が演じたフリーライターの安藤千草役も印象的だった。この作品は、角田光代の人気小説を映画化した衝撃作。不倫相手の家庭に生まれた赤ん坊の恵理菜を誘拐し、薫と名付け、自分の子どもとして育てた誘拐犯、野々宮希和子(永作博美)の4年間の逃亡劇と、事件の影響で心を閉ざしたまま成長した恵理菜(井上真央)の葛藤と愛憎を活写している。千草は一連の事件を取材し、書籍として出版しようと恵理菜に近づくが、小池はそれだけではない何らかの意図を感じさせる挙動不審な人物として千草を表現。物語を展開させるキーパーソンとして重要な役割を担った。 ■人生のひきこもごもを描く笑いに満ちたホームドラマで本領発揮!「俺の話は長い」ほか このように様々な役柄を演じてきた小池だが、とりわけ近年は精力的にドラマに出演し女優としての存在感が増している。 深夜ドラマ「わたし旦那をシェアしてた」では、事実婚をしていた夫が殺害され、衝撃の事実を知るシングルマザー役に。また、中村倫也と共演した「美食探偵 明智五郎」では明智(中村)を翻弄する殺人鬼役、そして有村架純主演作「姉ちゃんの恋人」では弟3人を養うヒロインの桃子(有村)が働くホームセンターの、恋する上司役など個性的なキャラクターにトライしている。 そんなジャンルを問わない抜群の対応力を持つ小池の最近の出演作のなかでも、とりわけ話題となったのが、生田斗真がダメ男を演じた2019年放送のホームドラマ「俺の話は長い」だろう。31歳の岸辺満(生田)は起業に失敗し、6年前から実家にニートとして寄生中。妙に口がたつ彼はヘリクツをこねて自分を正当化して生きてきた。そんな折、マイホームの建て替えのため姉家族も実家に身を寄せることになり…。この作品で小池は丸の内のバリキャリである満の姉、秋葉綾子役を演じ、満のダメっぷりを「現実逃避」とバッサリ切りつつ姉としての愛情深さも表現してみせた。 こうして振り返ってみるだけでも、小池が女優業においても様々なジャンルの作品で、個性を発揮しつつ作品の色調に調和してきたことがよくわかる。バランス力抜群の小池が今後どのような作品に出演していくのか、引き続き注目していきたい。 文/足立美由紀