【高校サッカー選手権】エース山下の2戦連続ハットなど、大津が4得点で東海大熊本星翔を下し4年連続21回目の全国切符
第103回全国高校サッカー選手権熊本予選は熊本市水前寺競技場で決勝戦を行い、大会4連覇を狙う大津と、7年ぶり2度目の全国選手権を目指す東海大熊本星翔が対戦した。 【フォトギャラリー】大津 vs 東海大熊本星翔 立ち上がりの1分、大津は右MF舛井悠悟の仕掛けからCKを獲得、これにキャプテンのDF五嶋夏生が合わせるチャンス。さらに3分にはDF野口悠真のパスにFW山下景司が抜け出すなど、幅をとって広く動かしながら機を見て縦に打ち込む形で徐々にペースを握り、ミドルエリアでのセカンドボールもMF畑拓海が的確なスライドから回収して再び展開する流れで、東海大星翔を押し込んでいく。 対する東海大星翔は、ボールを握られる時間が多い中でも、左右も下がって構える5-4-1のブロックを形成、細かくスライドしながら縦のコースは消しつつ、ドリブルの仕掛けに対しても粘り強く体を寄せ、あるいは足を伸ばして対応。引っ掛けた後のマイボールを握って押し返す状況には持ち込めないものの、最終ラインからシンプルに長いボールをサイドや背後のスペースに供給。前線に収まる場面こそ少なかったが、判断の早さと意思共有からチャンスをうかがう。 それでも自力に勝る大津は、右の舛井、準決勝でも存在感を見せた左の小松皐らMFとサイドバックの連携から東海大星翔ゴールに迫り、得点機を量産。11分にスルーパスから、さらに左からのマイナスの折り返しに兼松将、14分には右からのクロスに山下、直後のコーナーから五嶋、16、17分にも山下とチャンスを作る。しかし東海大星翔はGK水口然斗の思い切りの良い反応やDF陣の体を張ったブロックなどでゴールを割らせず、逆に26分にはMF吉崎逢生、33分にはMF丸野陽と、大津の背後のスペースを突く形から好機を迎える。ただいずれも枠を捉えることはできず、大津ペースで進んだ前半は0-0で折り返した。 「負ける試合はシュートも1ケタしか打てなかったりすることが多いが、前半はシュートもコーナーキックも多く、形もできていたので、スペースにボールを置いて、山下が関わっていく攻撃を増やしていこうと話した」と山城朋大監督が明かしたように、後半に入ると大津はサイドバックがより高い位置を取ることで仕掛けに厚みを増すと、まず44分、右サイドを突破した舛井の折り返しを山下が合わせ、ようやく先制に成功。 これで固さが取れ、ボールを動かすテンポも一段上がったことでリズムを引き寄せると、10分後の54分には畑からの縦パスを受けた山下が相手に囲まれた状況で角度のない位置から右足を振り、ファーに流し込む技ありのゴールで追加点。山下は60分にもゴールを決め、準決勝に続く2試合連続のハットトリックでリードを広げる。 東海大星翔はその後、交代出場したMF岡本佳緯やMF宮田明空がドリブルで持ち込むシーンを作るが、大津の固く安定した守備を破るには迫力や精度、サポートも含めた厚みが足りず、後半のシュートはアディショナルタイムに丸野が狙った1本にとどまった。 大津は80+3分、80分に交代でピッチに入った松本昌大の左での仕掛けに畑が詰める形でオウンゴールを誘って4点目を挙げ、新人戦、高校総体に続く県内三冠とともに、4年連続となる全国選手権出場を決めた。 「相手に引かれると外で回すことが多くなって中に入っていけず、カウンターを受けるのが課題なので、時間をかけずに相手の嫌がるところへ入っていけるようにしていきたい。前半は危ない場面もあったし、チャンスをしっかり決めていればもう少し楽な展開になっていたと思うので、セットプレーも含めて1つ目のチャンスを決める力が大事。今年のチームは高さやスピードがあり、ボールを持てる選手もいるのでバランスがいいのが強みだが、全国大会に向けて仕上げていきたい」と山城監督。 3得点の山下は、「インターハイでは対策されて敗れたので、あと1ヶ月でチームと個人の力をさらに高めて全国に挑みたい」と、得点王も見据える。夏の悔しさや高円宮杯JFA U-18プレミアリーグWESTでの難しい戦いを通して積み上げた経験は、これまで何度も跳ね返されてきた険しい頂を極める上での大きな力になるはずだ。 (文・写真=井芹貴志)