劇映画『孤独のグルメ』の撮影秘話「ロケをしたお店は3軒すべて実在、俳優じゃなくご本人に出演をお願いしていた」
ふたりが偶然出会う店「波長が合ってきた」
──松重さんも久住さんも、放送後の混雑を避けるために、撮影後すぐにお店に伺うこともあると聞きました。偶然出会ったことはありますか。 松重:ありましたね。家族で行ったら、あとから久住さんが来たんですよ。 久住:あー! あれは最高でしたね。お互い「なんでいるの?」って(笑)。 松重:リピートしたお店で久住さんの話を聞くこともありますよ。「朝まで飲んだらしい」みたいな(笑)。 久住:どこですか? 松重:「居酒屋 舞子」(鳥取)。 久住:あー、朝までは飲んでないけど、ベロベロになった。 松重:あそこはうまいですよね。かに面がやばいですよ。これ原価割れしてますから。かに面作るためにおばちゃんを2人雇ってるらしいんです。しかし、最近すごく店探しの波長が久住さんと合うんですよ。店探しのセンサーが、『孤独のグルメ』的になってきた。 久住:10年以上やって、何軒のお店に行ったんだろう。 松重:お店選びの探知機を久住さんから植えつけられていますから(笑)。今回の映画の舞台であるパリでも韓国でも五島列島でも「ここだ!」ってピンと来るんですよ。 久住:映画で登場するお店は、どこも実によかったです。 松重:ロケをしたお店は3軒あって、すべて実在するお店なんですが、そこもスタッフと一緒に見つけました。佇まいやメニューはもちろん、お店の方込みでいいんですよ。なので、店員さんをエキストラさんや俳優さんにやってほしくなくて、全部ご本人に出演をお願いしたんです。 久住:ほんとに!? みんな最高でしたよ! 松重:皆さん演技が想像以上に素晴らしかった。パリのマダムなんて、どこの俳優だよって感じで。カトリーヌ・ドヌーヴかと思いました(笑)。 久住:知る人ぞ知る実力派人気女優さんかと思った。 松重:五島の食堂のおばちゃんも、最初は「うち、そういうのイヤだよ。芝居なんてやったことないし」って言ってたけど、説明台詞なんて立て板に水で話しますから。あまりにいい演技なので2カット撮りましたからね。 久住:韓国のお店もよかったですね。サバがうまそうだった。映画を観たら、みんな行くでしょうね。 松重:読者の皆さん、映画で登場したお店を巡礼すると、ご本人たちと会えますから、そこも楽しみにしてください。 【主演・松重豊】 1963年、福岡県出身。蜷川幸雄主宰の蜷川スタジオを経て、映画、ドラマ、舞台で幅広く活躍。連続テレビドラマの主演は『孤独のグルメ』が初。著書に『空洞のなかみ』(毎日新聞出版)、『たべるノヲト。』(マガジンハウス)がある 【原作者・久住昌之】 1958年、東京都出身。1981年、泉晴紀とのコンビ「泉昌之」として漫画誌『ガロ』デビュー。『孤独のグルメ』のほかに『花のズボラ飯』(秋田書店)など著書多数。音楽家としても知られ、ドラマシリーズでは劇伴を担当 取材・文/沼澤典史(清談社) 撮影/ヤナガワゴーッ! ヘアメイク/高橋郁美 スタイリング/増井芳江 【沼澤典史(清談社)】 清談社 ライター/編集 編集担当作→稲田豊史さん『こわされた夫婦』、生駒明さん『フーゾクの現代史』、諸富祥彦さん、島田友和さん、青木美帆さん『1on1コミュニケーション入門』、しみけんさん『モテる男39の法則』。X(旧Twitter):@numazawa_n
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