厚労省年金部会 2036年度以降「基礎年金」給付水準3割改善へ 2160万円超の共働き世帯などは減
厚生労働省は財政が改善した「厚生年金」の積立金を活用し、将来の「基礎年金」の水準を現在の見通しより3割底上げする考えを示しました。 厚労省がきょう正式に示したのは、すべての人が受け取る基礎年金を底上げする案です。 年金制度では、20歳以上60歳未満のすべての人が加入する「国民年金(基礎年金)」と、会社などに勤務する人が加入する「厚生年金」の2階建てになっています。 2つの年金の財源は別々に管理され、少子高齢化が進み現役世代が減っても制度が保てるよう、「マクロ経済スライド」という仕組みで年金の給付水準を抑えています。 厚生年金は、女性の労働参加が進んでいることなどから、財政が安定していて、マクロ経済スライドで年金を減額する期間は2026年度に終了します。 一方で基礎年金は、デフレ下で計画通り減額が進まない期間があったため、財政が悪化し、年金の減額は2057年度まで長引く見通しです。 そこで、厚労省は「厚生年金」の減額期間を延ばし、浮いた財源を「基礎年金」に回すことで、「基礎年金」の減額期間を縮め、給付水準を底上げする案を示しました。 これによって2036年度以降の基礎年金の給付水準が、現在の見通しより3割改善するということです。 基礎年金しか受け取れない自営業者や低収入の会社員らが受け取る年金の水準低下を防ぎ、1階建て部分の底上げで2階部分の厚生年金を受け取る人の大半も受給額が増えるということです。 一方で、年収が40年間にわたって1080万円を超える人や、2160万円を超える共働き世帯は受け取る水準が下がります。 また、厚生年金の抑制が今の制度より長くなることで、この期間に厚生年金を受け取る人の年金水準が一時的に低下するという問題があります。 今回の案は、基礎年金の給付の穴埋めに厚生年金の財源をあてることになることから、厚生年金の保険料を折半している会社員や会社の反発が出る可能性があります。 また、基礎年金の給付水準が改善する場合、財源の半分は国庫でまかなっているため、将来の国の負担が2070年度には2兆6000億円増えると試算されています。
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