重機の音は希望の音 輪島・和菓子店の塚本さん 市と解体申請呼び掛け
「やっと始まった」。5日、公費解体がスタートした輪島市の輪島朝市。通り沿いで老舗和菓子店を営んでいた塚本民子さん(73)は、鳴り響く重機の音に耳を澄ませていた。「この音を聞くと元気が出てくる。重機の音は希望の音。さあ、始まっぞ」。一日も早い復興に向け、市とともに周辺の建物所有者に解体申請を呼び掛ける。 塚本さんが切り盛りしていた「饅頭処(まんじゅうどころ)つかもと」は、大規模火災で店舗兼工場が全焼し、骨組みだけが残った。マリンタウンの仮設住宅から朝市に通い、変わり果てた店の様子を見るのが日課になった。 元日の地震では、朝市周辺で十数人が亡くなったとされる。塚本さんの店に「えがらまんじゅう」を買いに来ていた顔なじみも犠牲になったという。「焼けた朝市通りを訪れるたびに悲しい気持ちになった。涙は流すだけ流しました」と振り返る。 市は複数棟ごとにエリアを区切り、所有者の申請が出そろった場所から順次、解体に取り組む方針を示している。しかし、塚本さんの店を含む一帯には申請が出ていない建物もあり、解体がいつ始まるかは見通せない。 解体の遅れは復興の遅れにつながる。市は朝市の関係者に解体申請を呼び掛けており、塚本さん自身も所有者に声を掛ける。「ここ(朝市)が大好きやから、瓦礫(がれき)だらけでもここに家を建てて朝市の復興を見届けたい。解体の始まりはその一歩です」と気丈に話した。