クジラ・淀ちゃんの死骸処理費用に「多くの疑義」、大阪市が徹底検証へ
昨年1月に大阪市内の淀川河口で死んだマッコウクジラの死骸の処理費用が当初見積もりの2倍以上にふくれあがった問題は、市の契約管財局による調査に加え、外部監察専門委員の弁護士らによる調査チームによる徹底的な検証が行われることになった。市監査委員は今年4月、委託業者の選定や金額の算定に多くの疑義があるとし、「金額ありきで価格交渉が進められたとの疑念がある」と指摘。市民グループは近く住民訴訟を起こす予定で、法廷でも適正かが問われることになる。 【写真】海中に沈めるため、作業船で運ばれるマッコウクジラの「淀ちゃん」 クジラは昨年1月9日に大阪市内の淀川河口付近で見つかり、13日に死んでいることが確認された。体長約15メートル、体重38トンの雄。交流サイト上で「淀ちゃん」と名付けられていた。 悪臭のほか、死骸にたまったガスが爆発する恐れもあり処理を急ぐ必要があったが、埋める場所はなく焼却も難しい。市は市内の海運会社に随意契約で処理を業務委託。同社は19日、クジラを乗せたバージ船(はしけ船)を別の船でひいて紀伊水道沖に運び、重りを付けて海に沈めた。 市は当初、処理費を3774万円と試算していたが、同社の提示額は8625万円。その後市は試算額を引き上げ、3月末に8019万円で契約を締結した。 この契約に疑問があるとして、市民グループが今年2月に住民監査請求。4月に公表された監査結果では、契約を巡る疑義が多数指摘された。 まず、業者選定について。契約を担当した大阪港湾局は、大阪港に曳(ひ)き船を常駐させている業者の中から委託業者を選んだが、常駐させていない業者の中には「より安価に対応できた」と回答した業者があった。 また、書類にも不備があった。業務委託設計書はなく、監査に対しては事後に作成した説明資料を提出。契約金額の基となる積算価格の算出には、委託業者の見積書を引用していた。 曳船(えいせん)作業費の割増料金に二重計上の疑いがあったほか、割り増しの必要のない復路分に加算。汚れた船を洗浄したとする清掃費に関しては、職員が清掃作業を確認していなかった。さらに委託業者との交渉記録には、契約金額を業者が要求した8千万円に近づけるため、清掃費を「ブラックボックス」として価格を上積みすることが相談された記録があり「不適切な計上との疑いが残る」とした。 これらの点を踏まえ、市監査委員は「契約の締結に関しては多くの疑義が認められ、契約事務として不当なものであった蓋然性が高い」と結論。横山英幸市長に対して第三者機関などで契約の詳細を再調査し、契約金額が不適正と認められた場合は職員に損害賠償請求を行うよう勧告した。