“俳優部”佐津川愛美の映画業界への熱い思い 変わらぬ信念の裏に初出演作で言われた言葉の存在
<ニッカンスポーツ・コム/芸能番記者コラム> 先日、デビュー20周年記念企画「佐津川愛美映画祭」(10月26日まで、群馬、愛知、静岡)を開催している佐津川愛美(35)をインタビューした。幅広い役柄に挑戦し、女優としてまい進する佐津川の映画業界に対する熱い思いを聞いた。 14歳で芸能界入りし、2005年公開の「蝉しぐれ」が映画初出演だった。「自分の父親の働く姿を観られるわけでもないので、14歳で大人たちが一生懸命動いて、働いている姿を初めて見たんです。みんなで1カットを作り上げる瞬間に感動しました。映画の玄葉が好きという気持ちを最初の現場で持たせていただけたのは私の道しるべです。映画に関わりたいという私の全てのスタート」という。 約20年前に初めて映画の現場に足を踏み入れてから、変わらない信念がある。そこには「蝉しぐれ」の撮影現場で黒土三男監督から言われた「女優はビールを注ぐな」「俳優部は下の下だ」という言葉の存在があるという。 「少し極端ですけど、『ビールを注ぐな』というのは女優としてプライドを持ちなさいという意味だと思います。『下の下』というのは、俳優部は皆が作り上げた舞台の上で芝居をするのだから、勘違いするなという意味だと私は思っています。私は“俳優部”という言葉が好きで、どの部署とも同等だと思っている。皆と一緒に作り上げる仲間であれることに魅力を感じています」 印象がよくなければ多くの監督と作品を作る事もないだろう。「事務所の力ではなく、自分の力で挑んできたタイプなので」と冗談を交えつつ、「楽しい現場になればと、相手を見ることは大切にしています」と明かした。 「俳優さんそれぞれのスタイルによって臨機応変にですが、コミュニケーションはしっかりとります。主演の時は監督やプロデューサーと話す機会も増えるので、自分がそのような場を設けてもらえる時には気持ちを伝えてから現場に入るようにしています」 先月の「佐津川愛美映画祭」東京公演では「ヒメアノ~ル」「だれかの木琴」「ポンチョに夜明けの風をはらませて」「ゼニガタ」「タイトル、拒絶」を上映し、大盛況だった。 東京公演開催前には劇場に足を運び、自らチラシ配りも行ったという。今後も映画業界のために何かできることはないかと考え、裏方に目を向けた、著書「みんなで映画をつくってます」(高崎映画祭との共同製作)の製作を決意し、現在も制作中だ。「映画業界には今もすごく課題が多い。俳優が発言することに良い部分、悪い部分があることは理解しているんですが、真摯(しんし)に作品に向かって頑張るスタッフさんがいる事も私は伝えたいんです」と語った。 続けて「コロナ禍前から映画館で映画を観る人が減少して、コロナ禍で完全に減った。今も値上がりして来にくい場所になっていると感じます。そんな中で、“私の芝居をみて”というより、大きいスクリーンで見て欲しいんです。俳優部を含めて現場の人間は、映画館で観てもらうために作っている。そこを大事にしていきたい」と決意した。 佐津川は50本を越える映画、100本以上のドラマに出演。今年は主演を務めた「毒娘」(内藤瑛亮監督)を始め「バジーノイズ」(風間太樹監督)も現在公開中。「かくしごと」(関根光才監督、6月7日公開)も控えている。“俳優部”の佐津川が今後、映画業界をどう照らしていくのか、注目したい。【加藤理沙】