小中高生の半数は睡眠不足?“厚労省の推奨時間”を満たしていないことが判明…親がすべきことを研究者に聞いた
約半数以上の子どもたちは睡眠時間が足りていない。そんな調査結果が明らかとなった。 理化学研究所と東京大学は、小中高生を対象にウェアラブルデバイスを用いた子どもの睡眠実態を把握する調査を2022年9月から実施。2024年1月までの期間に、全国の学校(延べ68校)約7700人の子どもたちのデータを解析した結果、全ての年代において、おおむね半分以上の子どもたちが、厚生労働省が推奨する睡眠時間を満たしていないことがわかった。 【画像】小1から高3年までの学年別平均睡眠時間を見る
平均睡眠時間は小学6年生が7.9時間
具体的な平均睡眠時間は小学6年生が7.90時間、中学3年生が7.09時間、高校3年生が6.45時間だった。一方、2024年2月に厚労省が策定したガイド「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、小学生は9~12時間、中高生は8~10時間の睡眠時間の確保が推奨されている。 他にも調査では、子どもたちは平日に睡眠不足が蓄積し、休日に睡眠補填がすることが見られた。 また、学年が上がるにつれて平日と休日の起床時刻に大きな乖離が生じ、一定数の子どもたちが「社会的時差ぼけ」と呼ばれる状態にあることが分かった。「社会的時差ぼけ」の状態とは、学校の時間などの社会的な制約により体内時計と環境・生活リズムの間に時差が生じ、日中の眠気や集中力の低下、イライラ感の増加など、心身に不調が生じる状態のことをいう。多くの場合、平日と週末の睡眠時間帯のずれが社会的時差ぼけ状態を生み出しているという。 こうした結果が明らかとなったわけだが、小中高生の中には、塾や習い事などで睡眠時間を確保することが難しい人も多いだろう。 では、睡眠時間を確保するためには、どうしたらよいのか? 研究チームの一人である東京大学の岸哲史特任講師に詳しく話を聞いた。
睡眠不足は学力・体力・メンタルヘルスに悪影響
――調査を始めた経緯は? 日本は子どもの頃から睡眠衛生が極めて悪い国であることが知られています。ウェアラブルデバイスを用いた簡便かつ正確な睡眠測定技術の開発を契機とし、現代の日本の子どもの睡眠の実態把握と子ども・保護者を対象とした啓発活動を展開するために、「子ども睡眠健診」プロジェクトを開始しました。最終的には、年に一回の健康診断に客観的睡眠測定を加える「睡眠健診」として実現することを目指しています。 ――今回の調査結果、どう思う? 客観的な睡眠測定に基づく結果であることを加味しても、米国睡眠医学会や厚労省「睡眠ガイド」による推奨時間には達していないことから、全体的に不足している状況が浮き彫りになったと思います。 ――そもそも睡眠時間が足りないとどんな影響が出る? 子どもたちにとって重要な、学力・体力・メンタルヘルスに悪影響が出ます。睡眠が足りないと、記憶の定着が悪くなり、怪我のリスクが高まり、心の不調につながります。 ――睡眠時間が足りない理由はどんなことが考えられる? 小中高生の場合、朝の登校時間が決まっているので、就寝時刻の遅れがそのまま睡眠時間の不足につながります。 就寝時刻が遅くなる理由としては、塾や部活を含む子どもたちの忙しいスケジュール、また核家族化や共働き世帯の増加などの社会構造の変化に伴い生じた家庭の生活時間帯の夜型化、スマホやタブレット等のデジタル機器の普及などが挙げられます。