岡田監督がトラ指揮官最多勝 並外れた負けん気と確かな眼力で積み上げた514の白星 鬼筆のスポ魂
人一倍どころか〝人千倍〟の負けず嫌いな性格が、514勝を積み上げた原動力だろう。阪神が3日の広島戦(マツダ)に2ー1で勝利し、岡田彰布監督(66)が阪神の指揮官として藤本定義氏に並ぶ歴代最多の514勝目を飾った。4日までに937試合で指揮を執り、戦績は514勝395敗28分け、勝率5割6分5厘。通算7季目での偉業となった。 【写真】2005年、リーグ優勝に貢献した阪神の藤川球児。「JFK」の一角として勝利の方程式を担った 試合終了後、阪神監督としての最多勝利について聞かれると「そんなん関係ないやん。関係ないってもう…」とはぐらかしたが、七福神のどこかに鎮座しているかのような満面の笑みが心の中を表している。ウソのつけない性格は若い頃から全く変わらない。 ■ゴルフで負けても… 野球に対する絶対的な自信と勝負に対する貪欲な姿勢は、他に類を見ない。選手の頃から負けることは何よりも嫌いだった。 あれは選手時代の晩年、沖縄・石垣島での自主トレだった。練習休日の夕刻、宿泊していたリゾートホテル近くの浜辺を何げなく見ると、ドライバーを手にした岡田選手が一心不乱に素振りを繰り返しているではないか。ずっと見ていると、「どこもおかしくないんや!」と言って汗をぬぐった。聞けば午前中にラウンドしたゴルフのスコアで他のメンバーに負け、悔しさのあまり、そんな行動に出たらしい。 ■藤川球児を抜擢 監督になっても負けん気は同じ。初年度の2004年は66勝70敗2分けの4位。星野仙一監督が率い、18年ぶりのリーグ優勝を成し遂げた前年から大きく順位を下げた。 シーズン終了後の高知・安芸での秋季キャンプ。久万俊二郎オーナーが陣中見舞いに訪れて監督を交えての会食となった。オーナーはBクラス転落を大いに反省し、もっと勝利に対する貪欲な姿勢を求めると、岡田監督は「勝とうと思えばいつでも勝てるんです」と〝反抗〟。オーナーは激怒し、食事会の後に球団社長を呼んで説教を始めた。 そのオフは新外国人野手としてシーツ、スペンサーを獲得も、投手陣の大きな補強はなし。それでも岡田監督は自信満々に「来季はいける」。自信の裏付けを聞くと、ある若手投手の名前が出てきた。藤川球児-。シーズン後半に1軍に定着したばかりの右腕の成長を高く評価し、「来季は球児をショートリリーフで起用すれば勝てる」と言い切った。 岡田監督の予言通り、翌05年に鉄壁のリリーフ陣「JFK」(ジェフ・ウィリアムス、藤川球児、久保田智之)がリーグ優勝の原動力となったのは周知の通りだ。選手を見る目の確かさは、昨季に最優秀選手(MVP)と最優秀新人(新人王)をダブル受賞した村上頌樹投手の抜擢(ばってき)に共通する。投手であれ、打者であれ、状態や技術を見抜く眼力はずば抜けている。