倒産件数・負債ともに今年2番目の高水準 年間件数はコロナ禍前の水準に ― 全国企業倒産集計2023年10月報
企業倒産、今年2番目の水準 年間件数は「8500件前後」になる見通し
2023年10月の企業倒産は790件発生した。前年同月(594件)を200件近く上回り、2023年3月(800件)に次いで今年2番目の高水準となった。2022年5月以降、18カ月連続で前年同月を上回り、倒産は増加基調が続いている。また、2023年1-10月の累計は6918件に達し、すでに2022年の年間件数(6376件)を上回った。このままのペースで推移した場合、年間の倒産件数は2015年(8517件)以来8年ぶりの8500件前後になる見込みである。 ゼロゼロ(コロナ)融資の元利払いや公租公課の支払いがアフターコロナで「平時」の対応に戻りつつあるなか、継続的な物価高や人手不足、後継者問題がコロナ禍で疲弊した中小企業に追い打ちをかけている。「ゼロゼロ(コロナ)融資後倒産」は10月に58件発生し、今年3番目の水準となったほか、「人手不足倒産」は2023年の年間件数が206件に達し、過去最多を更新した。また、2022年初からの値上げラッシュが収束に向かいつつある一方で、「物価高倒産」は10月に86件発生し、6カ月ぶりに過去最多を更新、集計開始後初めて80件を超えた。
社会保険料や税金の滞納が引き金になる倒産増加へ
10月の負債総額は3055億8400万円で、倒産件数と同じく今年2番目に多かった。負債5000万円未満の小規模企業の倒産が大多数を占めている状況に変わりないものの、アペックス(負債91億円、石川)やレイ・カズン(同31億円、東京)といった負債10億円を超える倒産も目立った。そのなかでも、パチンコホール大手のガイアなど7社(東京・千葉)が、負債約1800億円を抱えて10月30日に民事再生法を申請したことで総額が大きく押し上げられた。 同グループの破綻要因は数あるが、最後の引き金のひとつは「社会保険料の支払い負担」だった。コロナ禍で社会保険料の納付を猶予されていたが、資金難から支払いに窮し、破綻直前に当局から差押え処分を受けていた。また、10月20日に破産手続き開始決定を受けた、免税店運営の「永山」(負債52億円、東京)も、8月、9月に社会保険料の支払いができず、一括での支払いを求められていた。過去滞納分の分割納付に加え、毎月新規に発生する分との支払い負担が重くのしかかった。 ガイアや永山の事例のように、税金や社会保険料など公租公課の滞納状態が続いた末に自社の資産を差し押さえられ、経営に行き詰まった「公租公課滞納倒産」は2023年1-10月に97件判明し、前年同期(58件)の約1.7倍に増加した。アフターコロナで本業を立て直すことができないまま、最大3年の支払い猶予期間を終えた企業において、税金や社会保険料などの滞納が最後の引き金となって倒産に至るケースは、今後さらに増加する可能性がある。