アスリートの「見えざる敵」?人工芝のPFASは大丈夫なのか、海外では議論が巻き起こり規制も
人工芝の製造過程ではPFASを使用
全米には人工芝のグラウンドが12000カ所ほどあり、少なくとも毎年1000カ所以上増えているとされる。ボストン市は2022年、市内の公園での人工芝の導入を禁止した。また、バーモント州、カリフォルニア州、コネチカット州などで禁止に向けた動きもある。 人工芝を製造する過程でPFASが使われており、アメリカの研究では、PFASの一種である「8:2FTOH」が検出されている。この物質を吸い込むなどして体内に取り込むと、発がん性が指摘され、すでに製造・使用が禁止されているPFOAに変化するという。 そのうえ、人工芝のフィールドには、衝撃を和らげるために砂やゴムチップを充填する。このゴムチップは廃タイヤを再生利用して作るため、亜鉛や、発がん性があるとされるベンゾピレンといった物質が検出された事例も報告されている。欧州委員会は昨年秋、こうした充填剤の2031年以降の販売を禁止した。
学校でも使われる人工芝。因果関係は分かっていないが、関心が低いままでいいのか
東京都教育庁の調査によると、23区の183の小中学校の校庭で人工芝が使われている。 人工芝の校庭について取材したジャーナリストの栗岡理子さんと日本消費者連盟による調査では、各区が導入する理由は「砂埃を抑えられる」「雨が降っても水はけがいい」「ケガをしにくい」などとなっている。また「寝転んで遊べる」と歓迎する声もあり、港区や中野区などでは今後、校庭の整備や新校舎建設の際に人工芝の導入を予定しているという。 PFASを含んだ人工芝による健康影響があるかどうか、確たることはわかっていない。ただ、製造過程でPFASが使われていることは明らかだ。このまま関心が低いままでいいのだろうか。
諸永裕司