神木隆之介も日曜劇場で挑戦 片岡凜、高橋文哉、二宮和也ら、“一人二役”を担った俳優たち
NHK連続テレビ小説『虎に翼』が最終回を迎え、すでに多くの視聴者の関心は次作の『おむすび』へと移っているのではないだろうか。だが、作品が完結してもなお、美佐江と美雪の二役を演じた片岡凜の表情が脳裏に焼き付いて離れない。ここまで“一人二役”を見事なまでに演じきる俳優を久しぶりに見た。 【写真】“一人二役”で『虎に翼』に怪演を刻んだ片岡凜 一人二役は舞台などではよく見る光景ではあるが、ドラマや映画でもこれまで多くの俳優たちが一人二役を演じてきた。ただでさえ、役を演じるという行為そのものが難しいことであるのに、共通の要素を持つキャラクターであればあるほど非常に難易度が高い作業になってしまう。その演じ分けが最大の見どころとなるわけだが、それは役者の力量に大きく左右される。 ●片岡凜『虎に翼』美佐江/美雪 その点に関して言えば、『虎に翼』で美佐江と美雪の一人二役を演じた片岡は本当に素晴らしい名演だったように思う。高校時代は成績優秀で東京大学の法学部を志望していた美佐江だが、ひったくり事件や買春事件への関与を疑われる。「どうして人を殺しちゃいけないのか」と寅子に問いかけるシーンは、法そのものへの根源的な問いであると同時に、美佐江の思考のゆがみを表してもいた。そこでの片岡の狂気的な表情は恐怖を伴いながらも、どこか人間としての美しさも持ち合わせており、彼女の一挙手一投足から目が離せなくなった。 東京大学に入学後はしばらく出演シーンがなかったため、視聴者の間でも出演が待望されていたが、美佐江の娘・美雪として再登場。見た目は母の美佐江にそっくりで、性格もかなり似ている。だが、美雪にはまだ良心があった。寅子との会話では美雪には美佐江の影が見え隠れしていたが、「おばあちゃんと一緒にいたいです」と佐江子に打ち明ける美雪の表情からはその影はすっかり消えていた。片岡が演じた一人二役は、もう一方の役と同じ振る舞いをしながらも、その役が持つ微細な心情の変化を表現しなければならない。片岡が演じた美雪には間違いなく美佐江が宿っていたし、母親への無自覚な憧れとそれに対する葛藤が表情に表れていた。 まだ弱冠20歳の片岡だが、これまでに『ペンディングトレイン―8時23分、明日 君と』(TBS系)や『ギークス~警察署の変人たち~』(フジテレビ系)にゲスト出演し、着実に俳優としてキャリアを積んでいる。10月期からは『海に眠るダイヤモンド』(TBS系)への出演も決定しており、『虎に翼』でのブレイクを機に注目を集めることは確実だろう。 ●神木隆之介『海に眠るダイヤモンド』鉄平/玲央 その『海に眠るダイヤモンド』で主演を務める神木隆之介もまた一人二役に挑戦している。本作は1955年からの石炭産業で躍進した長崎県・端島と現代の東京を舞台に、昭和の高度経済成長期と現代を結ぶ、70年にわたる愛と青春と友情、そして家族の壮大な物語が描かれる。神木が演じるのは、1950年代の端島に生きる、明るくまっすぐな性格の鉄平と、夢も希望もやる気もなく、無気力で刹那的なもう一人の主人公・ホストの玲央。短髪で好青年な鉄平に対して、玲央は金髪でどこか冷たい目線を向けている。 NHK連続テレビ小説『らんまん』や、第96回アカデミー賞で視覚効果賞を受賞した『ゴジラ-1.0』でのまっすぐな演技が記憶に新しいが、『コントが始まる』(日本テレビ系)では高校の同級生で結成したコントトリオ・マクベス役で人生初の金髪に挑戦、12月に公開を控える映画『聖☆おにいさん THE MOVIE~ホーリーメンVS悪魔軍団~』でも金髪おかっぱのヨハネ役を担当するなど、キャラが立ったコミカルな役も演じてきた。特に神木に関してはどんな配役であろうと、柔軟に演じられる表現力がある。両極端な役を同じ作品で味わえるとなると、より神木の演じ分けの器用さが発揮されそうだ。