倒産件数24年ぶり1万件割れも「倒産が見えにくく」
東京商工リサーチが8日発表した2014年度の全国企業倒産状況によると、倒産件数は前年度比9.4%減の9543件で、年度としては24年ぶりに1万件を下回った。アベノミクスによる景気回復効果もあるが、同リサーチは「倒産件数は減っているが『休廃業』する会社も多く、倒産が見えにくくなっている」と話している。 【図表】アベノミクスで増加中 「隠れ倒産」って何? 倒産件数は、金融機関による中小企業への資金繰りの援助や、消費税対策の公共事業前倒し発注などによって、年度としては6年連続で前年を下回り、バブル期である1990年(7157件)以来の1万件割れまで減少した。月別では、2015年3月こそ859件と前年同月比で増えたが、2014年12月と2015年2月に700件を下回るなど減少傾向がみてとれる。
負債総額は、前年度比32.6%減の1兆8686億円。こちらも年度としては25年ぶりの2兆円割れとなった。負債総額100億円以上の倒産は、航空会社スカイマーク(1月、710億円)など9件と前年度の21件より約6割減少。上場企業の倒産もスカイマークの1件のみだった。 同リサーチ情報部は「月700~800件の倒産はバブル期並みに少ない。倒産件数だけ見ていると景気が良くなっているようにみえるが、中小企業など、すみずみまで行き渡っているとはいえない状態。倒産自体は減っているが、実は『休廃業』する会社も多い(2014年は2万6999件。過去10年間で3番目に多い件数)。2009年からの金融円滑化法は2013年で終わったが、実質的には“続いている状態”で、政府の政策によって倒産が見えにくくなっていることも考慮するべき」と話している。
「円安」関連倒産は4割増
一方で、「円安」に関連した倒産は260件と前年度の183件より4割増加した。ただ、これはトレンドで見ると減少傾向で、年度前半の2014年4~6月は前年同期の34件から79件に、同7~9月は同34件から71件と倍増ペースだったものの、原油価格の下落や鉄鋼価格の低下などによって、2015年1~3月では同65件から43件と減少している。 同リーサチ情報部は「中小企業は急激な変化に追いつかない傾向があるが、現在の円相場は高止まりだが安定している。ただ今後、さらに円安が進むようだと倒産が増える懸念がある」としている。