受け継がれる情熱(9月29日)
国内最大規模の中南米音楽祭として名高い川俣町の「コスキン・エン・ハポン」は今年、50回目を迎えるはずだった。5年前は台風で中止、その後の2年間は新型コロナ禍で通常開催を断念した。それでも音楽を愛する人々の熱意はそう簡単には冷めない▼47回目の今年は10月12日に始まる。約150団体が3日間、時に情熱的に、時に郷愁あふれる楽曲を響かせる。1975(昭和50)年の1回目に出演したのは13団体。創始者で主催団体ノルテ・ハポン代表の長沼康光さんが、今では小学5年生の音楽教科書で紹介されるほどのイベントに育て上げた▼長沼さんが亡くなり8年の歳月が流れても、情熱は受け継がれている。「長沼さんがいなければ音楽祭はなかった」。代表を引き継いだ斎藤寛幸さんは功績をしのぶ。出演者は「山あいにある川俣は中南米音楽が本当に似合う」と感嘆する▼開演まで2週間を切り、準備は大詰めだ。奏でる人と聞く人、ベテラン演奏者と新人…。年に1度だけ集い、肝胆相照らす。「その人たちをいかにつなぐかが私たちの仕事」と捉える斎藤さん。熱い思いを抱く人々が続く限り、60、70と回を重ねるに違いない。無限旋律のように。<2024・9・29>