クレジットカード業界の表現規制はナゼ? 「R18作品締め出し」の先にある「危険な兆候」
「今後どこまで規制が広がるのか」が分からない
単なる決済手段を運営しているクレジットカード会社が共同被告となったのは、明らかに異常といえます。例えば、クレカで決裁して購入された自動車が人をはねたとして、クレカ会社に責任の一端があると宣言したようなものです。 しかしクレカ会社としては、当然「自衛」を行わないわけにはいきません。ポルノを感じさせるコンテンツの決済を停止する決断を迫られたクレカ会社も、また被害者といえるでしょう。 実のところ、クレカ会社は2年ほど前から卑猥(ひわい)さを感じる言葉に対し「言葉狩り」を行なっており、主にアダルトコンテンツを扱うサイトが対応を迫られてきました。狩られた言葉はマニアックかつ多岐に渡っており、日本側からもかなりアダルト用語に精通した人物が規制側として参加していることは確実でしょう。 「アダルトなんだから、ポルノだから規制されるのは当たり前じゃないか」と考える方もいるかもしれませんが、事はそう簡単ではありません。規制とは一度始まれば、無制限に広がる可能性を秘めています。一般の作品に対しても大きな圧力がかかり、自主規制が始まってしまうことも多いのです。 特に出版社では、編集部ごとどころか、編集者個人ごとに自主規制を行っていることがあります。 筆者は知人の作家から「『ダークエルフ』を出そうとしたら編集部側にNOと言われた」「『狂』という文字を禁止されたので『狂戦士』という言葉を使えなかった」という具体的な話を聞かされたことがあります。 こうした自主規制はまだ全体に広がっているものではありませんが、現場の一部に「何が規制されるのか分からないので先んじて禁止しておく」という発想が広がっていることは否定できません。理不尽な規制は、現在当たり前に使われている「言葉」すら使えなくなる可能性を秘めているのです。 だからこそ、「アダルトジャンルだけが規制の対象なんでしょ?」と楽観視するのは危険な状況であるということです。創作物に対する不当な扱いがあった時に、声をあげて作品を守る姿勢を忘れてはならないのだと思います。
早川清一朗