「授業料は全員無料」理事長が100億円集めて開いた異色の高専は授業も斬新だった 起業家の育成を目指す「神山まるごと高専」
4人一組のチームとなった中学生たちは用意されたフラフープや縄跳びなどを使って新しい鬼ごっこのルールづくりに励んだ。それぞれのチームが発表。その後、そのうちの一つで、ボールを使った鬼ごっこを実際に体験して楽しんだ。 なぜ、斬新な授業をするのか。鈴木さんが教えてくれた。「(一般的な)体育はルールを守る最たる科目だが、ルールはつくれるんだという小さな体験を積み重ねさせたい。自分で決めたという責任感や自信がつき、強みになっていく」 鈴木さんは公立の中高一貫校の教員やプロバスケットボールチームのマネジャーを経て、神山まるごと高専の教員になった。「本質的な教育をしようとしていると感じた」のが理由だ。既存の学校教育への課題意識も語った。 「授業の内容や教員からの指導について、学生自身がどんな意味があるのかを考える機会が必要。子どもの芽を摘まず、可能性を狭めないよう意識したい。命に関わることでない限り『こうしたら』とは言わない」
参加した高松市の中学3年森川花恋さん(15)は充実した様子だった。「普段の中学校の授業と全然違う。頭を使った内容で難しかったが、面白く、達成感があった」。私も学生時代、こんな体育の授業は受けたことがなかった。伸び伸びと元気に授業に取り組んでいる姿がうらやましく思えた。 ▽起業家が人生を赤裸々に伝える 水曜日の夜には各方面で活躍する「起業家講師」を神山に招き、学生たちと交流する。この日は香水ブランドを立ち上げた渡辺裕太さん(35)ら8人が集まった。渡辺さんは講演で、入学した東京大学で天才に囲まれて挫折したこと、就職したが仕事が面白くなく「あまり人生のことを考えていなかった」ことなどを赤裸々に語った。 好きだった香水で起業した渡辺さん。講演では仕事のエッセンスも伝えた。「新しいことをする。それが今日とどうつながっているかを大事にしている」 終了後も中学生たちが渡辺さんを囲み質問が相次いでいた。