『戦場記者』須賀川拓監督×国境なき医師団の白川優子氏、“報道と医療”の意義を語る
今回で4回目を迎える『TBSドキュメンタリー映画祭 2024』が開催されている東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で、『BORDER 戦場記者 × イスラム国』の上映後舞台挨拶が行われた。監督を務める須賀川拓、本編にも出演している白川優子氏(国境なき医師団)が登壇した。 【全ての画像】『BORDER 戦場記者 × イスラム国』舞台挨拶の模様 世界の紛争地域を飛び回るTBS『NEWS23』専属ジャーナリストである須賀川監督は、昨年、人気バラエティ番組『クレイジージャーニー』に戦地から生中継で出演し、その緊迫したリポートが大きな反響を呼んだ。最新作『BORDER 戦場記者 × イスラム国』では、シリア奥深くの砂漠にある難民キャンプを取材し、壊滅したと思われていた過激派組織イスラム国の“いま”、その極めて危険な思想にいまだ共鳴する人々がいる現実を克明に映し出す。 須賀川監督は、劇中で白川氏が語ったシリアの都市・ラッカの惨状について「僕もカメラマンも号泣してしまった」と告白。白川氏も「ラッカは本当にきつかった」と重苦しい口調で振り返り、「執筆なら書けるんですが、人前で話すことはできず、今回、初めてお話しさせていただいた」と映画を観終えたばかりの客席に、胸中を明かしていた。 過酷な医療現場での心の拠り所は「仲間たちの支え、この一言に尽きる」といい、「行けば救える命もありますし、笑顔を見ることもあり、支えられている。国境なき医師団は、それこそ世界中から、医師たちが集まっていますから、私と同じ悩みやジレンマを抱えている」と語った。 その上で、白川氏は「目の前の命を救う医療活動とともに、日頃目にする非人道的なことを証言する活動もしている」と国境なき医師団の役割を説明。「発信し、知ってもらうこと。間違っていることは間違っているとはっきり証言し、問題解決に目を向けてもらうことで、より多くの命を助けることができる」と意義を訴えかけた。 戦地取材の経験豊富な須賀川監督だが、「国境なき医師団が撤退した地域は、やばいという記者たちの不文律がある」と明かし、「それだけ最前線で人道主義を貫いている。百戦錬磨の白川さんたちが一番大変だと思う」と敬意を示した。自身はドキュメンタリー映画を通して「世界中の困っている人に共感してほしい」といい、「まずは、知ること。そのきっかけを伝える機会になれば。戦地の人たちは、忘れないでほしいと願っている」と報道の意義を語っていた。 <作品概要> 『BORDER 戦場記者 × イスラム国』 ■世界を震撼させたイスラム国、その過激思想は“生きていた” 「お前の首を切り落としてやる」。シリア奥深くの砂漠にある難民キャンプで子供たちが記者に放った言葉は、ただの脅しではなく、血の滴るナイフを突き付けられているかのようにリアルだった。壊滅したはずの過激派組織イスラム国。しかし他者との共生を拒みながらも、世界に広がった極めて過激な思想に、いまだ共鳴する人たちがいる。いったい、なぜ。忘れられた地で、記者が「境界BORDER」を歩いた。 <イベント情報> 『TBSドキュメンタリー映画祭 2024』 3月15日(金)~3月28日(木) 東京:ヒューマントラストシネマ渋谷 3月22日(金)~4月4日(木) 大阪:シネ・リーブル梅田 3月22日(金)~4月4日(木) 名古屋:センチュリーシネマ 3月22日(金)~4月4日(木) 京都:UPLINK京都 3月29日(金)~4月11日(木) 福岡:キノシネマ天神 3月30日(土)~4月11日(木) 札幌:札幌シアターキノ