『おっさんずラブ』田中圭×林遣都の姿が愛しい幕開け 井浦新による『unknown』パロディも
「アイルビーバック!」 かつて武蔵(吉田鋼太郎)が燃え盛る炎の中で叫んだ言霊が現実となって、『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)として帰ってきた。 【写真】初回から刺されるインパクト大な新キャラ・和泉幸(井浦新) 2018年に連続ドラマが放送、2019年には映画化もされ、日本のみならずアジア、ヨーロッパなど世界中でファンを生んだ『おっさんずラブ』シリーズ。主演の田中圭をはじめとする林遣都、吉田鋼太郎ら主要キャスト、さらにはチームが続投。「天空不動産」の続編として、5年ぶりとなるドラマシリーズがスタートした。 ストーリーとしては『劇場版 おっさんずラブ ~LOVE or DEAD~』のその後。新婚生活を送る春田(田中圭)、牧(林遣都)が前作の恋愛関係から、家族としてのパートナーへと次のステージに進んでいるのがポイントである。この5年間で田中と林もまた年齢を重ね、私生活では実際に家族を持ったりと変化もあった。そんな月日の経過とともに、2人は私生活でも仲を深めてきたことは、今作で描かれている新婚初夜のイチャイチャや初詣のシーンに少なからず発揮されていると言えるだろう(TVerで公開のスピンオフドラマ「春田と牧の新婚初夜」ではさらに)。相手の心を温めるプレゼントを互いに渡し、不器用ながらもまっすぐに思いを伝える2人。本作の伝家の宝刀、「創一」「凌太」呼びも第1話から飛び出している。 コロナ禍の遠距離恋愛を経て、3年半ぶりに日本に戻ってきた牧は春田との新婚生活を歩み出すものの、課長に昇進した牧は帰国早々多忙な日々に追われることに。ちず(内田理央)の勧め(というより友達キャンペーン)もあり、家事代行サービスを頼むことに決めた2人の家に現れたのは、武蔵だった。彼は天空不動産を早期退職後、「ばしゃうまクリーンサービス」に再就職。春田と牧の家政夫として家にやって来ることで、やがては嫁姑バトルへと発展していくことになる。 愛しの春田を前に、冷静を保とうとする武蔵だったが、内心は思いが溢れ出しそうになっていた。天空不動産を突如辞めたのも、春田を忘れるため。「君の幸せを願って離れたのに! なぜまた俺を呼び寄せた!」「はるたああああん!!」と今作でも武蔵の重めの愛は健在。吉田鋼太郎の芝居はまだ抑制しているように見受けられるが、それが「渡る世間に武蔵あり」のタイトルが付けられた第2話から暴れ出していくようだ。 狸穴(沢村一樹)は脱サラして漁師に、ジャスティス(志尊淳)は子供が5人生まれて育休中と、劇場版のキャラクターもしっかりと補完しつつ、本作では新キャラが2人登場している。それが和泉幸(井浦新)と六道菊之助(三浦翔平)。和泉は天空不動産に中途採用で入社し、春田のもとに部下としてつく少々ポンコツな人物で、六道はおかかおむすび専門店「おむすびごろりん」の店主。2人を軸にして物語はラスト30秒で衝撃的な展開へと進んでいくことになる。 家を出た春田が目にしたのは、腹部から血を流して倒れている和泉。すると隣の家から六道が出てきて、救急車を呼ぼうとする春田を止め、和泉を持ち上げると「どうかこれは見なかったことに」と告げ、家に戻っていくのだ。言ってしまうと、これは完全に『unknown』(テレビ朝日系)のパロディである。 2023年4月に放送されたドラマ『unknown』は、『おっさんずラブ』チームが手がけ、田中や吉田が出演したラブサスペンス。井浦新も田中が演じる人物の父親であり殺人犯役として出演しており、そんな縁があっての『おっさんずラブ』への起用なのかもしれない。和泉が倒れている様子からは“血濡れの花嫁”を彷彿とさせるのと同時に、そんな『unknown』の流れも汲む自由で、だけどまっすぐな『おっさんずラブ』になることを予感させてくれる。 『おっさんずラブ』と『unknown』で共通しているのは、性別や人種、セクシュアリティを超えて、互いが分かり合い、愛を伝えていくというシンプルなメッセージだ。
渡辺彰浩