不動産投資の指南書では推奨されているが…専門家が警告する〈リスクの高い〉リフォーム方法
セルフリフォームはなぜ避けるべきか
ここで繰り返しになりますが、セルフリフォームのデメリットをもっと掘り下げていくと、大きく以下の3つがあげられます。 (1)仕上がりがキレイではない 仕上がりがキレイではないのは、素人が行うので仕方のないデメリットです。誰でもキレイに施工できるのであればプロの価値はありません。 リフォームコストをカットするためクロスを張ることに挑戦する人もいますが、何よりクロスは仕上がりの美しさが大切です。 とくに柄物のアクセントクロスは「柄合わせ」といって、柄を合わせて張らなければいけません。簡単そうに見えて難易度が高いのがクロス張りです。 また前述したとおり、塗装にチャレンジする人も多いですが、塗装の種類はもちろん、その養生がとても大切です。建築用語の「養生」とは、工事中ですでに仕上がった部分や部材が痛んだり傷ついたり、汚れたりするのを防ぐため、ビニールをかける等の保護をすることを指します。塗装においての養生とは、塗装する以外の部分に塗料が付かないように覆いをします。 この養生をしっかりしなくては仕上がりがキレイになりませんし、塗装はムラが出やすいため、下地処理をしっかりしているか、塗料の選定を間違えていないか、また塗り方も大切です。このように単純で簡単にできそうなものほど、実は難しいのです。 それから、これはプロがやったから、素人がやったからというのは関係ありませんが、建物全体が古ぼけているなかで、一部だけを新品にしてしまうと、古い部分が悪目立ちしてしまいます。そのため、あえて古い部分と合う色を選択するのも大切です。 塗装であれば、ただ白い色を選ぶよりは、少しクリームがかった色を選ぶのが良いでしょう。こうしたプロであれば常識であることも、一般の人は知りません。そのため、仕上がりのバランスが悪くなりかねません。 (2)機会ロス 機会ロスというのは、リフォーム費用を惜しむあまり、半年間セルフリフォームを行うようなケースです。プロに頼めば3日で終わって10万円だったとします。翌月から貸し出すことができれば、月5万円の家賃が入ったと仮定します。 すると半年間の間に、リフォーム費用が10万円、家賃が25万円。ざっくりとした計算では半年で15万円の利益です。これが半年間かけてセルフリフォームを行い、材料費が5分の1の2万円だったとします。 これを同じ半年で計算すると、家賃収入は0で、かつマイナス2万円の出費です。表向きの支出が少なくても、なかなか商品化されないことにはお金も生みません。これが機会ロスです。 なぜ、このような機会ロスが生まれてしまうのか。その背景をいえば、リフォームコストを下げたい願望があるからです。このセルフリフォームを行う人は、キャッシュで少額の物件を買った人に多いといえます。たとえば、築古の戸建てを買った人です。 数ヵ月で終わればまだしも、なかには1年以上も時間をかけている人がいます。 その間に、月3万円の家賃が入ってきたと仮定すると、36万円の損失になります。こうなるとプロに依頼したほうが良い結果だったのではないかと思ってしまうパターンです。しかも成功したなら良いのですが、うまくできなかった場合はさらにプラスでお金がかかるので、これはリスク以外の何物でもありません。 キャッシュで物件を買った人はローン返済がないので、そのあたりを深く考えずにセルフリフォームをしているケースが多いように感じます。 (3)自分の時間が奪われる 最後に自分の時間が奪われます。これはサラリーマン投資家にとっても、一番のデメリットだと思います。仕事をしていない暇な立場ならまだしも、本業のあるなかで限られた時間を使ってセルフリフォームをすることで、より時間が削られてしまいます。 そうであれば、物件を探すなど自分にしかできないことに注力するほうが効率は良いように感じます。あるいは本業に力を入れて、年収を上げて自己資金を増やすなどの努力をしたほうが不動産投資に有益だと考えます。 不動産投資で成功できない人のなかには、そもそも「時間がない」という理由をつけて物件を買わない人もいますが、一方で凝り性になってしまい、家庭を顧みず物件に注力している人もいます。 サラリーマン投資家の皆さんは、材料費だけで計算して「DIYは安い」と認識されていますが、一度、年収を時給換算して、「DIYで稼げる時給はいくらなのか」を計算してみましょう。 おそらく多くの皆さんの時給は高いはずです。プロに頼んだほうが安く仕上がる可能性が高いです。 その他にも自分で工事をした場合に、事件事故のリスクがあります。インターフォン交換は簡単だからと取り組む方も多いですが、きちんと結線しないと火事になる恐れもあります。 なお電気工事士法では、屋内配線は基本的に電気工事士の資格を持つ技術者が施工しなければならないと定めています。 もちろん、大きな事故につながる可能性は少ないでしょう。それでも事故が起こる可能性がある限り、それを想定したリスクヘッジをするべきなのです。 プロの業者は工事中の事故に保険をかけて、万が一をしっかり考えて対策しています。 それでも、本格的にリフォームに取り組んでみたい人は、建築現場でアルバイトをすれば良いのではないかと思います。アルバイトをすればお金も稼げますし、プロの仕事の手順を学べます。 柳田 将禎 株式会社ピカいち 代表取締役
柳田 将禎