中国で日本人初の年代別代表監督に就任した上村健一氏「信じてくれた中国サッカー界に全て出し尽くす」政治では反日が根強い中国で高まる日本人指導者の存在感
中国社会や国民性がサッカーにも影響
ーー中国の選手にはどのような印象を持っていますか? 選手の特徴という部分で考えると、選手一人一人の実行力というものは高いレベルにあると思います。選手に提示したことに対して、選手は愚直に実行しようとしてくれますし、その部分は本当にすごい能力だなと思います。身体能力自体も日本人を比較対象とするならば、日本の同年代の子よりもフィジカル的な要素は高いと思っています。 ただ、その能力を100%生かしきれているとは言えないので、その辺を小さい年代から改善していけばもっと良くなり、中国サッカー界にとって良い選手がたくさん出てくると思います。 ーー中国選手の「良い面」と「悪い面」はどのようなものが挙げられますか? 良いところは実行力だと思います。本当に選手は指導者が提示したものに対して真剣に取り組んでくれますし、最後までプレーしてくれるところは高く、そしてフィジカル的な要素も高いレベルにあります。 マイナス部分を言うと、その高い能力を100%生かしきれていません。もう一つは指導者が提示したものには実行してくれますが、自分で自発的に選んでプレーを選択していくというところが少し足りないのかなと思います。 ーーそれは中国の社会や国民性が影響していると考えますか? 大きく影響していると思います。子供たちは周りの大人に準備されて、それをやってきたことが多かったので実際に選手たちが自分で考え、選んでいくことが最初は苦手でした。それが全て悪いことではないと思いますが、そこを改善しようと時間を掛けています。良い方法を見つけてそれぞれの選手たちに合ったものを提示していきます。時間を掛けて選手たちに継続して伝えていけば改善されると思っています。
中国サッカー界はポテンシャルの塊
ーー日本人として意識している事、グラウンドでの指導、言葉の掛け方などはありますか? 中国のサッカー市場というものは、岡田さん(※岡田武史元日本代表監督)に拓いて頂いたものだと思っています。 岡田さんに対して泥を塗るわけにはいきませんし、今後はさらに色々な日本人指導者が中国に入ってくると思いますが、そういう時に自分が道を閉ざすことはしたくないです。 日本と中国は同じアジア圏として切磋琢磨して良い影響を与え続けると、最終的にはお互いが良い方向になっていくと思います。そういったものを築くためにも一人の日本人として「自分だけが」という自分軸ではなく、他人軸で物事を考えながら指導をやっています。声掛けの部分で言うと、どちらかで言うと選手たちは委縮することが多いので気を付けなければいけないのですが、僕自身の指導のスタイルとして、「良いものは良い、悪いものは悪い」でしかないので、それを明確にして選手が発信しているものに対して公平にジャッジをするということに気を付けています。 ーー現在の仕事が評価され、中国のA代表の監督のオファーがあった場合はどのように受け止めますか? その時に自分が本当に値する力があるのかということ、人間性を持ち合わせているのかというものをしっかりと自分の中で判断して、その時に決めたいと思います。ただ僕がやるべきことは、もしA代表になろうが、16歳以下の代表監督だろうが、街クラブに行こうが、どこに行こうが同じであって、目の前の選手に自分ができるサポートを一生懸命やるだけです。ただ自分ができることを選手のために出来るサポートを100%やるということだけです。 ーー中国サッカー界の未来をどのように見ていますか? 中国サッカー界に関わる皆さんが夢を持ってやれば明るいと思います。僕自身は楽観的な人間なので明るいと思っています。 ーー中国の代表チームは将来、日本のライバルになり世界の強豪国を驚かせるチームになると思いますか? その可能性を持ち合わせている子供たちがたくさんいるので、育成年代から良い指導を受けて、良い時間を過ごしていけば、世界を驚かせる時は早く来ると思います。中国は人口が14億人いて圧倒的に広い国土があるので、ポテンシャルの塊だと思っています。 今自分が指導している選手たちには毎日を大切にして、5年後なのか6年後なのか10年後なのかは分からないけど、なるべく早い段階で自分が国を背負って、自分が中国代表をワールドカップに連れて行くんだという思いで臨んでほしいと思います。 ーー上村監督の想いは選手たちに届いていますか? 分かりませんけど(笑)、自分をうるさい親父だなと思って選手たちは歯を食いしばってやっていますね。 取材中、上村監督はグラウンドを精力的に動き回り、気付いた点を選手一人一人に細かく伝えていた。練習中、時として強い言葉が選手に向けられることもあったが、そこには「選手たちを成長させたい」という圧倒的な情熱を感じた。 中国代表チームがアジアを越えて世界を驚かせる日は来るのか。上村監督の挑戦は始まったばかりだ。 【取材・執筆:FNN北京支局 河村忠徳】
河村忠徳,フジテレビ,国際取材部
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