バイクだけじゃない! ヤマハ発動機が「EV市場」に大挑戦する根本理由
ケータハムにeアクスル提供
ヤマハ発動機は、英ケータハムと協業し、EV用パワートレイン「eアクスル」を供給することを目指す。 【画像】ヤマハ発動機の「平均年収」公開! その驚きの数字をグラフでチェック! 同社は楽器製造のヤマハと同じルーツを持ち、ヤマハのオートバイ部門が独立して誕生した。現在はヤマハとは別会社として、モビリティ関連の事業を主に行い、特に二輪車の開発や製造が主要業務となっている。四輪車に関するイメージが少ないヤマハ発動機が四輪EV用のパワートレインを開発することに驚く人も多いだろうが、実は昔から関係が強い。 一方、ケータハムは「セブン」シリーズというクラシックなスポーツカーを専門に作る英国のメーカーだ。セブンは無駄なものが一切ない超軽量な車で、軽快な走りが特徴的。日本にも正式に輸入されており、街中でも見かけることがある。その独特のデザインは印象に残る。日本向けにも車を開発しており、日本の軽自動車規格に合わせて小型化した「セブン160」および「セブン170」は、スズキ製の660ccエンジンを搭載した同社最軽量モデルだ。 ヤマハ発動機とケータハムが協力する「プロジェクトV」は、世界的なEVシフトに合わせた新型車開発プロジェクトで、ケータハムの小型軽量なコンセプトにヤマハが開発した電動パワートレインが搭載される予定だ。 このプロジェクトでは、従来のセブンシリーズとは異なるクローズドボディのクーペが登場し、ケータハムにとって次世代を見据えた挑戦的で重要なプロジェクトになる。現在は2025年にプロトタイプ車両の完成を目指しており、将来的な量産化を目指して基礎技術の研究開発が進められている。 ヤマハ発動機にとっては初めての電動パワートレインの参入だが、これまで四輪車向けのパワートレイン開発に成功してきた実績があり、大きな期待がかかっている。
四輪車と深いつながり
ヤマハ発動機は二輪車の開発で定評があるメーカーだが、創業当初からボート、船外機、スノーモービルなど、さまざまなモビリティ事業を展開してきた。しかし、一般的な四輪車事業にはこれまで参入しておらず、 ・オフロードバギー ・レーシングカート ・ゴルフカート など、一部の限定的な用途向け小型ビークルを開発してきた。 それでも、自動車向けエンジンの分野では存在感を示している。特にトヨタ自動車とのつながりが深い。トヨタが威信をかけて開発した「トヨタ 2000GT」は、実はトヨタとヤマハが共同開発した車で、エンジンや高級感のある内装の開発にヤマハの技術が活かされた。また、市販車の生産の大部分もヤマハ発動機が担っていた。2000GT誕生の裏にはヤマハ発動機の貢献が大きく、その後の自動車分野への関与を深めることとなった。 1980年代から1990年代にかけては、トヨタなどのエンジンチューニングや、F1をはじめとしたレーシングカー用エンジンの開発を行い、ヤマハ発動機のエンジン技術はスポーツカーやレーシングカーで磨かれてきた。 さらに近年では、トヨタの高級車ブランド・レクサスのスーパーカー「LFA」に、ヤマハ製のエンジンが搭載された。この4.8L V型10気筒エンジンは、LFA専用のエンジンとして圧倒的なパワーとトルクを提供し、国産スーパーカーとして最高の加速性能と最高速度を誇る車に仕上がった。また、そのエンジンサウンドは美しいと評価されており、 「ヤマハの楽器」 を連想させるような特徴を持っている。 こうした実績を背景に、ヤマハ発動機は2016年頃から四輪車事業への本格参入を検討していたが、2018年に技術的な問題や投資規模の大きさを理由に、正式に中止を発表した。それでも、レーシングカー分野への参入は続ける方針であり、今後はEVのフォーミュラレース「フォーミュラE」にも参戦する予定だ。