空き家活用もインバウンド頼み? 全国に900万戸、2拠点居住の促進制度も解決策にならず
総務省が先月公表した「住宅・土地統計調査」の住宅数概数集計(速報集計)によると、2023年10月時点で国内の空き家数は900万戸と調査開始以来最多となった。 不動産相続これだけはやっちゃダメ!「共有名義」はリスクの温床でしかない 空き家の増加が深刻化する中、注目を集めているのが2拠点居住を促す制度創設と、低廉空き家の報酬に関する法改正だ。これらは空き家活用の起爆剤となり得るのか。 「空き家は利用価値から3タイプに分けられます。1つが東京の世田谷や練馬などにある都市部の空き家。2つ目が軽井沢や秩父など別荘地や都市近郊の空き家。3つ目が若年層の流出が著しい、いわゆる田舎の空き家です。空き家問題で俎上に載せられるのは、売るのも貸すのも困難な3つ目の空き家です」(不動産アナリスト・長谷川高氏) 仲介業者にとって取引に手間がかかる割に稼げない、800万円未満の物件の仲介手数料の上限が引き上げられる見通しだが、これで限界集落の空き家の流通が進むとは考えにくいという。 15日に成立した「改正広域的地域活性化基盤整備法」は、子育て世代を中心に地方への人の流れを促すため、都市と地方の2拠点居住の支援を強化するものだが、長谷川高氏はこう話す。 「各自治体の移住促進策も思うように結果が出せていない状況です。最大のネックが仕事で、地方で働く場合、枠が限られる公務員のほか農林水産、人手不足の介護や医療などに限定されます。子育てしやすく、住環境が充実していて、稼げる仕事があれば、そもそも若者の人口流出は起こらなかったでしょう。高齢になれば、医療面で不安も出てきます。2拠点居住も移動コストの高さから、時間的、経済的余裕のある層しか気軽に実行できないのが現実です」 農業に従事したい若者の移住も見られる。 「農業で稼ぐにはある程度規模を大きくしないと生計が成り立ちませんが、耕作放棄地が増えているにもかかわらず、農地法の壁で移住者が簡単に所有できない点も改善の余地があると思います」(長谷川高氏) だが、田舎にしかない魅力を生かす方法も生まれてきている。 「東京や京都などの観光地に飽きた外国人旅行客が日本の田舎を訪れるケースが増えています。地方では空き家を移住者に貸し出しても、5000円や1万円しか家賃が取れないことも少なくなく、これではリフォーム代や維持費が捻出できませんが、眺めがよい山や海辺、棚田が見渡せるような空き家であれば、民泊にして1泊数万円で貸し出すことも不可能ではありません」(長谷川高氏) 年々増加する空き家の有効活用は一筋縄ではいかない。