女子フィギュア・河辺愛菜、2度の涙の意味…アクシデント乗り越え「不安が安心に切り替わった」
◇記者コラム「Free Talking」 4日の「名古屋フィギュアスケートフェスティバル」に出演した女子の河辺愛菜(20)=中京大=の表情を見て、2週間前の光景を思い出した。昨年12月の全日本選手権。河辺は大会中に2度涙を流していた。 20日のショートプログラム(SP)後は「出し切れなかった。やりきったと思えない」と悔し涙が目に浮かび、22日のフリーを終えると「不安が安心に切り替わった」という満足感でまた泣いた。理由はSP直前のアクシデント。6分間練習中に他の選手と衝突し、右腕に痛みとしびれが走った。右手の感覚がないまま臨んだSPは62・25点で14位発進となった。 今回の全日本選手権は輝きを取り戻す第一歩としたかった。2021年大会は17歳で3位となり翌年の北京五輪に出場。しかし、今季はシニア転向後初めて日本スケート連盟の強化指定を外れた。シーズン前半の国際大会派遣がなかったのはジュニア時代までさかのぼっても初めてという。 国際大会を転戦しない分、全日本選手権へ向けて入念に準備した。SPのみで競った12月の愛知県競技会では11月の西日本選手権を上回る67・02点を記録。全日本選手権のSP前日には「リラックスできている」と手応えを語っていた。 それだけに、SPの内容は悔しかった。気持ちを切り替えきれなかった21日夜。男子フリーで自らと同じSP14位からの大逆転で3位に入った壷井達也(22)=シスメックス=の演技が目にとまった。「巻き返すところまでいけなくても、出し切らなかったら絶対に後悔する」。闘志に火がついた。 痛みが「ゼロではなかったけど、(演技への)支障はないぐらい」まで回復した22日のフリーでは気迫を見せた。7本のジャンプを全て降りて、西日本選手権のフリーを10点上回る127・98点をマークした。順位は13位だったが、「何があっても大丈夫という自信になった」。揺らぐことのない心の強さをたずさえて、26年ミラノ・コルティナ五輪の代表争いに参戦していく。 (冬季スポーツ担当・渡辺拓海)
中日スポーツ