中国で自閉症補助犬の卒業式 「星の子」たちのパートナーに
【東方新報】中国で自閉スペクトラム症の子どもは「星星的孩子(星の子)」と呼ばれる。その星の子たちにかわいいパートナーが誕生した。 上海話劇芸術センター(Shanghai Dramatic Arts Center)でこのほど、3頭のラブラドールの卒業式が行われた。卒業したハーレー、ハリー、エリーの3頭は、自閉スペクトラム症の子どもをサポートするよう特別に訓練された補助犬。マッチングを経て、自閉症の子どものいる家庭に派遣される予定だ。 自閉症補助犬は世界的にも比較的新しく、自閉症の子どもたちの生活補助に役立てようと研究されている。中国では、上海盲導犬学校で2021年から国際組織の基準に沿って、ラブラドール犬を訓練し、ようやく必要な全科目を修了したという。 上海盲導犬学校の顧問である頼傑(Lai Jie)さんは、「盲導犬は視覚を使って障害者を助けるが、自閉症補助犬は豊かな感情を使って自閉症の子どもとコミュニケーションを取り、子どもの緊張を解きほぐすことが知られている」と解説する。 世界約30か国約150の非営利の補助犬の育成団体で構成される「国際アシスタンス・ドッグ協会(ADI)」の調査によると、自閉症補助犬は、おおむね14歳以下の自閉症の子どもの治療に効果があるとされ、自閉症の子どもは補助犬を通じて、外の世界に関心を持つようになると考えられている。 課題は社会的な認知だ。中国の街角では、盲導犬をみかけることがあるが、ドアを開けたり、落としたものを拾ったりする補助犬(アシスタンス・ドッグ)を見かけることはまだ少ない。ホテルやレストラン、公共の場に補助犬を連れて入ることを断られることも多いと言われる。 しかも、中国では自閉症への取り組みが欧米に比べて遅れており、メディアで大きく取り上げられるようになったのは最近のことだ。中国には100万人以上の自閉症の人がいるが、専門的な治療や療育を受けているのは2割程度といわれる。 「星の子」とは、親や専門家でつくる民間NGO(非政府組織)「北京星星雨教育研究所(星星雨)」などが中心になってサポートしてきたことから、こう呼ばれるようになった。 星星雨の活動は、中国出身のハリウッド俳優ジェット・リー(李連杰)の映画『海洋天堂(英題:Ocean Heaven)』(2010年、中国香港合作)の脚本にもなった。自閉症の一人息子を残して先立つ父親の思いを描いた脚本にジェット・リーが涙し、ノーギャラでの出演を熱望したという。 新しく誕生した自閉症補助犬も、この映画のように自閉症への認知を広げることができるだろうか。3頭の卒業式を、中国主要メディアが写真や動画を使って温かく報じたことは希望だろう。星の子たちのもとで活躍する3頭の姿が早くみたいものだ。(c)東方新報/AFPBB News ※「東方新報」は、1995年に日本で創刊された中国語の新聞です。