エッジAIカメラで白杖の死角を補完 視覚障がい者の歩行支援
マリスcreative designは「CEATEC 2024」(2024年10月15~18日、幕張メッセ)に出展し、AI(人工知能)チップを搭載した視覚障がい者向けの歩行支援デバイス「Seeker」を紹介した。同社は福祉機器を手掛けるスタートアップだ。 Seekerのアラートユニットを取り付けた白杖[クリックで拡大] 視覚障がい者が携行する白杖には路面の状況を確認するという機能があるが、足元以外の状況は白杖では判別できない。そのため、横断歩道や駅のホームで危険を感じる当事者が多い。さらに、上半身付近の障害物も判別できないため、例えば街路樹の枝先や停車中の大型自動車のサイドミラーなどに衝突してしまうことがあるという。ヘルパーが同伴すればこうした危険は避けられるが、事前の申請が必要なことや費用負担があることから、外出のたびに利用することは難しい。 同社代表の和田康宏氏は、自身の母親が身体障がい者だという。その生活を間近で見てきた経験から、「介護の充実も重要だが、本人には『自分でできることは自分でやりたい』という気持ちがある。障がい者の自立をテクノロジーで支援することを目指している」と語る。
リアルタイムで障害物や信号を判断してアラート
Seekerは、白杖では分からない危険を検知し、視覚障がい者の一人での歩行をサポートするデバイスだ。カメラと測距センサー、エッジAIチップを搭載したメインユニットと、手持ちの白杖に取り付けて振動で障害物の存在を知らせるアラートユニットで構成されている。充電式で、1日1回程度の充電を想定する。 メインユニットを首にかけると、カメラとセンサーで情報収集し、周囲の状況を分析する。ヘッドフォンのような見た目なので、周囲から見て違和感が少ない。同社が開発したAIアルゴリズムによってリアルタイムで信号の色や障害物を判断し、立ち止まる必要があるときにはアラートユニットが振動する。その後でメインユニットのスピーカーから「顔の付近に障害物があります」というように状況を伝える音声が流れる。振動と音声の2段階で危険を知らせるのは、当事者の「集中して歩いているので音声が流れても気が付かないかもしれない」といった声を取り入れたためだ。 Seekerは現在開発中で、2025年の夏ごろに量産開始を予定する。現時点では危険を検知するためのデバイスだが、将来的には買い物などの付加価値の高い領域での活用も目指すという。
EE Times Japan