中小の賃上げ、人手確保のための防衛的側面も 骨太の方針決定、中小への賃上げ波及課題
21日に閣議決定された「骨太の方針」には、デフレの完全脱却に向けて「物価上昇を上回る賃金上昇を達成し定着させる」と明記された。今年の春闘では大企業で高水準の賃上げが相次いだが、雇用の7割を占め、特に関西に多い中小企業まで波及するかどうかが課題となっている。 骨太の方針では、持続的な賃上げを実現するための具体策として、業務の効率化や生産性を高めようとする企業への支援のほか、男女間の賃金格差の解消に向けた環境整備や、価格転嫁対策などに取り組むとした。 大阪商工会議所の鳥井信吾会頭は「中小企業が人手不足を解消し持続的な賃上げができるよう、中小企業の稼ぐ力強化に最優先に取り組んでほしい」とコメントした。 日本商工会議所は今月、令和6年春闘で中小に勤める正社員の定期昇給やベースアップを含む月給の平均賃上げ率が3・62%だったと発表。中小でも賃上げが進むが、5%を超える大企業の勢いには届いていない。 大商が2月に実施し、関西企業351社から回答を得た調査では、賃上げを実施予定とした中小のうち61・3%が「業績改善はないが実施」としており、人手を確保するための「防衛的な賃上げ」の側面が目立った。 りそな総合研究所の荒木秀之主席研究員は、賃上げ効果が顕在化する7月ごろに実質賃金がプラスになる期待があるとしつつ、「電気・ガス代の補助終了などで物価が上昇し、賃上げ効果を打ち消す懸念がある」と指摘した。(井上浩平)