第一三共COO、がん治療薬で優位性維持できる-中国企業が躍進も
(ブルームバーグ): 第一三共の奥沢宏幸社長兼最高執行責任者(COO)はがん治療薬について、中国の製薬企業の躍進には注目しているが、第一三共が持つ創薬ノウハウや製造体制の整備は「一朝一夕にはできないものだ」として、優位性を維持できるとの見方を示した。
第一三共はがん細胞に標的を絞り、抗体に付加した薬物をがん細胞内に直接届ける抗体薬物複合体(ADC)の開発に力を入れる。奥沢氏は11日のインタビューで、同社の「DS-9606」と呼ばれる次世代ADC分野の治療薬候補について臨床データを発表したことを挙げ、メガファーマや中国などが「我々を追いかけてきているとは思うが、我々はその先を行く」と話した。
ADCは従来の抗がん剤に比べて効き目が高いことが期待されている。2019年に第一三共が米食品医薬品局(FDA)から主力のがん治療薬「エンハーツ」の承認を取得したことで、下火になっていたADC開発が再び盛りがった。
23年には米ファイザーがADC開発の米シージェンを430億ドル(約6兆4000億円)で買収すると発表。米メルクやGSKなど製薬大手は、ADC開発を進める中国企業への関心を高めている。
高打率バッター
第一三共は、エンハーツの対象疾患の拡大や、がん治療薬のラインアップ拡充に取り組む。エンハーツについて、使える乳がんの対象を拡大するための承認を国内で申請したと4日に発表した。エンハーツについて「これだけ打率の高いバッターは今までいなかった」と自信を見せる。
英アストラゼネカと共同で開発する新たな治療薬候補の「ダトポタマブ デルクステカン」については、9月に肺がんと乳がん向けの臨床試験の結果を公表。患者が死亡するまでの期間を表す全生存期間という項目で、統計的に有意な改善が認められなかった。
評価未達だったものの、奥沢氏はADCの開発方針は全く変わっていないとした上で、承認取得に向けて様々なデータをFDAには共有していると話した。