絶望の先に何もなくとも…それでいいのかもしれない 私を救ってくれた舞台、劇団おぼんろ『聖ダジュメリ曲芸団』
【なにがあってもゴキゲンちゃん】 先日、劇団おぼんろ第24回本公演『聖ダジュメリ曲芸団』を池袋に観に行ってきました。私がホリプロの事務所に入ったばかりの頃からお世話になっている社員さんからのお誘いでした。 劇場に入ると役者さんが全員ピエロのメイクで迎えてくださいました。ロビーをウロウロしていて、お客さんと普通に談笑。昔、遊園地に行ってゲートをくぐった途端、気持ちがフワッと上がって、足取りが軽くなった感覚を思い出しました。 日常にピエロが出てくるという違和感がワクワクさせてくれて、日常の違和感をもっと意図的に取り入れられたら、ほんの少しだけでも気持ちをフワッと上げたり出来るのだなぁと思いました。 「冷蔵庫にこけし」 「テーブルに沈丁花」 「キッチンに子象」 「トイレでカルメン!」 ちょっとした違和感とはなんだろなぁ?と想像するだけで楽しいです。 本編は道化師のみなさんがダニとノミと人間になる、嘘みたいな本当みたいな世界。ダニとノミと人間になってって、まったく意味がわからないかもしれませんが、道化師であることで何にでもなれる世界でした。それ以上でもそれ以外でもなく、ただそこにある世界を覗かせていただいた感覚です。 世界はくすんでいるのに、目に飛び込む声や姿はキラキラしてました。観劇から数日経っても、心の小箱をそっと開けるとその世界がぽっこり浮かび上がって、誰にも媚びることなく、同じ景色で歌い、もがき、嘆き、笑い、くすんだ世界でキラキラしています。 最近、不安で押しつぶされそうな時がありましたが、舞台に救われました。絶望しながら前に進めばいいだけだと思わせてくれました。その先に何もなかったとしてもそれでいいのかもしれないと思わせてくれました。 私自身が思った気持ちに嘘はないのだから、それを大事にして無碍(むげ)にせず、まぁるくまぁるく、そのままそのまま、なにがあってもゴキゲンちゃんで過ごしたいなぁと思います。 ■川村エミコ(かわむら・えみこ) 1979年生まれ。神奈川県出身。東京経済大学卒業。2003年からピン芸人として活動し、08年10月に白鳥久美子とお笑いコンビの「たんぽぽ」を結成。10年にフジテレビ系「めちゃ×2イケてるッ!」の新レギュラーに。現在は日本テレビ系「世界の果てまでイッテQ!」などで活躍するほか、自身のYouTube『おかっぱちゃんねる』も話題。「こけし」集めの趣味や、温泉ソムリエアンバサダー、夜景鑑賞士の資格も持つ。23年から三浦市の〝みうら観光大使〟に就任。初の書き下ろし楽曲「優しさモンスター」配信中。