斉藤立を五輪直前に国際大会派遣 鈴木桂治監督が異例の判断を説明「金メダルの確率を高めるため」 リネールの戦略にも対抗
柔道男子日本代表の鈴木桂治監督が14日、オンラインで取材に応じ、100キロ超級でパリ五輪代表の斉藤立(JESグループ)のパンアメリカン・オープン(21、22日・リマ)派遣の意図について、「金メダルの確率を高めるため」と説明した。 本番を約1か月後に控えた時期の国際大会派遣は極めて異例だ。当初は優勝した5月の国際大会が最後の実戦の予定だったが、五輪2度制覇のテディ・リネール(フランス)が8日に格付けの低い国際大会に出場して優勝。五輪ランキングで上位8人に与えられるシード順位で6位に浮上し、斉藤が7位に後退したことで、状況は大きく変わったという。 現在のシード順位では斉藤は準々決勝で昨年世界選手権覇者のイナル・タソエフ(AIN=中立選手)と対戦が予想される。ただ、今大会は格付けは低いが、5位以内に入れば斉藤が第6シードに再浮上する。日本側はリネールが8日の大会に出場したのも、タソエフとの準々決勝での対戦を避けるためではないかと推察。現状では準々決勝でタソエフ、準決勝でリネールと厳しい組み合わせになるが、第6シードでは準々決勝の想定が斉藤と好相性のテムル・ラキモフ(タジキスタン)に変わることも踏まえ、派遣の決断に至った。 ただ、今大会は現時点でのエントリー選手が斉藤とリネール、地元・ペルーの2選手の計4人。リネールも実際に出場するかは不透明だ。仮に斉藤以外の3人が棄権した場合は大会が成立せず、シード順は変わらない。それでも今大会は五輪ランキングポイント対象の最終戦で、斉藤としてはいずれにしても現地に入らざるを得ない状況だ。 さらにペルーまでの移動は片道30時間以上かかる。移動の負担も大きいが、鈴木監督は本人や所属と話し合い、金メダル獲得の確率を高めるためには、リスクを負ってでもシード順を上げることが重要だと判断。斉藤からは、戦略的に大会出場を重ねてくるライバルに対し「全てリネールの思い通りにいかせることはしたくない」との意志表示もあったという。 五輪直前にシード順にこだわって国際大会に代表選手を派遣するという判断は異例だ。鈴木監督は「強い選手を倒してこそだという意見も、もちろんあると思う」とした上で、「リスクを排除するのが我々(指導陣)の仕事。選手に無駄な負担をかける必要はない。金メダルの可能性を少しでも100%に近付けるための準備をする上での判断。強い選手から逃げているわけではない。戦略の一つ」と強調。日本柔道界悲願の最重量級金メダルへ、あらゆる手を尽くす考えを示した。
報知新聞社