「家族信託」の相談をしましたが、わが家は「利用できない」とのこと。母の認知症が心配だから相談したのに……。家族信託は「認知症対策」なのではないのですか?
【注意】家族信託は認知症で意思能力が低下すると利用できない
家族信託は認知症対策として有用ですが、本人が認知症を発症して判断力が低下した後では利用ができません。なぜなら、家族信託を利用するには、本人と受託者の間で信託契約を締結しなければならず、当事者に契約を結ぶのに十分な意思能力があることが必須だからです。 ただし、認知症を発症したら絶対に家族信託を利用できなくなるわけではありません。認知症の程度が軽度で、医師から意思能力があると判断された場合は、公証人の立会いのもと、家族信託の契約を結べる可能性があります。 軽度認知症の段階で信託契約を結ぶ場合は、高度な判断能力を要しない、できるだけ簡素な契約内容にするとよいでしょう。
認知症発症後に財産管理対策をするには成年後見制度の利用が必要
認知症になると、口座凍結や不当契約、詐欺などのリスクがあり、財産管理の対策は不可欠です。認知症を発症し、意思能力が低下した後で財産管理対策が必要となった場合、選択肢は家庭裁判所が選任した後見人等が本人の保護・支援に当たる、成年後見制度(法定後見制度)に絞られます。 成年後見制度を利用すると、本人の望まない人が後見人になる可能性や、財産の積極的な運用などが難しくなるといったデメリットがあります。本人や家族の意思を最大限に反映した財産管理を望むのであれば、高齢になり認知症の発症リスクが高まる前に、早めに家族信託などの対策を家族で検討する必要があるでしょう。
家族信託を検討するなら親が元気なうちに話し合おう
家族信託は、信頼する家族に財産管理を任せられ、認知症発症後でもスムーズで柔軟な財産管理を可能にする制度です。ただし、認知症を発症し、症状が進行してしまってからでは、利用するのが難しくなります。 家族信託の利用を検討している場合は、親がまだ元気なうちに希望を聞き、どのようなかたちで希望に沿う財産管理を実現するのか、専門家の手も借りながらよく検討しましょう。 出典 神戸地方法務局 兵庫県司法書士会 ~相続で未来へ~ わたしのエンディングノート 第2部 相続で未来へつなぐ 「争族」にならないために知って安心 家族信託とは? 法務省 成年後見制度・成年後見登記制度 Q&A 執筆者:FINANCIAL FIELD編集部 ファイナンシャルプランナー
ファイナンシャルフィールド編集部