ECBが政策運営の新たな枠組み発表、金利フロアシステムは維持
(ブルームバーグ): 欧州中央銀行(ECB)は、金融政策運営の新たな枠組みを発表した。金利のかじ取りでは現行の仕組みを維持する一方で、金融機関の業務に必要な資金規模について銀行側の意見を多く取り入れるようにする。
ユーロ圏20カ国の物価安定を維持するというECBの主要な責務を支える枠組みの変更では、流動性を供給するためECBに債券の恒久的なポートフォリオの活用も認めた。新たな枠組みへの移行スケジュールは示されておらず、過去の金融緩和策による多額の資金が依然システム内にあるため、移行プロセスは長期にわたりそうだ。
ECBは2022年遅く、いわゆる運営上の枠組みを見直すと明らかにしていた。当時はロシアのウクライナ侵攻に続いて利上げが始まり、超低金利と大量の債券購入があった時代に別れを告げた頃だった。
ラガルドECB総裁は発表文で「過去数年の金融システムと金融政策に有意な変化」があったと認め、「新たな枠組みはECBの政策運営が効果的かつ堅固、柔軟性と効率性に優れるものであり続けることを確実にするだろう」と説明した。
ECBの主な発表内容は以下の通り。
金利
世界金融危機以前、ECBは「コリドー」と呼ばれるシステムで金融機関全体の流動性水準を管理し、銀行が入札を通じて資金を調達する際には主要リファイナンス金利が最低応札金利だった。
だが、2008年の金融危機とその後の欧州債務危機で巨額の債券を買い入れる量的緩和が始まると、以前の枠組みは崩れた。入札の必要性がなくなったためで、中銀預金金利が主要な政策手段となった。この現行システムを、ECBは正式なものとすることに決定した。
債券ポートフォリオ
ECBは欧州債務危機や新型コロナウイルス流行による不況への対応で買い入れた証券を、依然として約4兆7000億ユーロ(約760兆円)抱えている。
この保有を巻き戻せば、ECBがインフレ退治に活用したメカニズムをやがてゆがめてしまうリスクが生じかねない。