異業種へキャリアチェンジした元CA コロナ禍で受けた影響をポジティブに感じられたワケ
コロナ禍でフライトは月1回に 先行きが不透明ななかでアルバイトも
国際線CAになって1年が過ぎた頃、新型コロナウイルスによるパンデミックが社会情勢に大きな影響を与えました。多くの人の生活に変化をもたらしましたが、そのなかでも航空業界は大打撃を受けた業態のひとつです。 そうした状況下で、平岡さんは「2020年からは、月に1度しかフライトの仕事がない状態」になったといいます。 「もともと副業はOKで、空いた時間に飲食店でアルバイトをするようになりました。ただ、先行きが見えないのはつらかったですね」 見通しが立たないなか、平岡さんがいた航空会社では、2021年4月頃に社外出向制度の募集を開始。さまざまな業界・業種の出向先から「スタートアップ・新規事業創出支援」に強く惹かれたといいます。 平岡さんの友人にはスタートアップ業界で働く人が複数いて、友人たちの話から刺激を受けることも多かったそう。違う業界で自身の可能性を広げてみたい気持ちに加え、「フライトができない不安を、新たな挑戦でポジティブな気持ちに変換できるかもしれないと思いました」と応募を決めました。
まったく異なる出向先での仕事 CAの経験を生かしてやりがいも
出向したのは、スタートアップや新規事業に取り組む人たちを対象にした、会員制コワーキングスペース「SAAI(サイ)」を運営する会社。平岡さんは会員と交流するほか、会員同士のコミュニケーションの機会を作るコミュニティマネージャーの仕事に就きました。 当初は、シードやアーリーといった、スタートアップ業界特有の用語を理解するだけでも精一杯だったという平岡さん。ただ、CAとして働いてきた経験から「初対面の会員さんとの雑談はまったく苦ではなく、そこは毎日、何百人ものお客様と接してきた接客経験に助けられました」と語ります。 そうした会話のなかで蓄積された情報は、会員同士をつなぐ仕事の面で役立ったそう。やがて「会員さんを横断的につなぐイベントなどを定期開催するなど、自分のキャリアを生かしたつながりを作れました」と、出向先での仕事に生かせるようになったといいます。 CAとは異なる仕事で、新鮮に感じることも多かったと語る平岡さん。 「フライトごとにメンバーが変わるCAと違い、出向先では同じチームでプロジェクトを立ち上げ、自分たちで企画から運営という形にする点にも、やりがいを感じました」 そのほかにも、一期一会なお客様への接客が主だったのに対し、会員には長期的に携わります。継続的なコミュニケーションのなかで役に立てることも、励みになりました。また、CAの仕事は会社の姿勢を提供するサービスで体現する存在でしたが、より相手の状況に合った対応をするコミュニティマネージャーの仕事も、新鮮でやりがいを覚えたそうです。 しかし、出向は期限つきのもの。ただ、当初は2022年3月までだった出向期間が、コロナ禍の状況によって2023年3月まで延長され、1年8か月にわたりました。 後編では、出向から戻ってCAに復帰後、キャリアチェンジを考えた理由について伺います。
Hint-Pot編集部・鍬田美穂