広島2区、逆風警戒の自民前職は低姿勢 野党は競合、批判票分散か【焦点区を歩く 2024年衆院選】
6選を目指す自民党前職平口洋(76)は、再び謝罪から幕を開ける選挙戦となった。「まず謝ることから始めなければいけない」。15日、広島市西区のJR西広島駅前であった出陣式で党派閥の裏金事件をわびた。 <ビジュアルニュース>衆院選2024 第1回トレンド調査 2021年の前回選も19年の参院選広島選挙区を巡る大規模買収事件の陳謝から始まった。自身は関与していないものの有権者の政治不信は共通する。党への逆風を機敏に感じ、世論の怒りを鎮めようと腐心する。 さらに気をもむのが区割り変更だ。広島2区は旧2区の江田島市の一部が外れた。同市は平口が育った場所。前回は得票率8割の5千票を得ていただけに大きな痛手だ。 2区は03年、09年の選挙で当時の民主党候補者が議席を獲得するなど、時々の「風」で与野党の勝敗が入れ替わる選挙区とされてきた。ただ、与野党一騎打ちとなった前回選は大規模買収事件への批判があったにもかかわらず、平口が立憲民主党新人を6万票余り離して圧勝した。 風に左右されない地力を付けてきた平口に対抗する野党。今回は、候補者の一本化に成功した前回選から一転、日本維新の会、共産党、国民民主党の3党がそれぞれ候補者を擁立した。 国民民主党は県内では党初の小選挙区の候補者として新人の福田玄(42)を立てた。党は支援組織の連合広島の要請を受け、県内では同じく民主党の流れをくむ立憲民主党と競合を避けると申し合わせていた。ただ、調整は難航し、候補者を発表したのは公示のわずか4日前だった。 「手取りを増やす政策をやらせてほしい」。福田は17日、西区のJR横川駅前に立ち、聴衆に訴えた。出遅れを挽回しようと、選挙戦では街頭での活動に専念し、名前と顔を売り込む。選挙カーには急きょ「42歳」と書いたステッカーも貼った。若さをアピールし、70代の平口との違いを強調する。 前回選で候補者を取り下げた共産党は今回、新人の岡田博美(65)を擁立した。ただ、立候補の表明は公示1カ月前だった。知名度不足を補おうと街頭に出ては「今の政治を大もとから変える」と訴える。長年の看護師経験を生かし、医療・介護の充実も主張する。 一方、日本維新の会新人の金城政孝(49)は昨年8月に立候補を表明し、着々と準備を進めてきた。廿日市市を中心に駅前などに立ち、地域の催しにも参加してきた。党の地方議員の支援を受けて選挙区内を回り「暮らしの改善を実感できる」政策の実現を訴える。 野党3人の立候補は与党批判票が分散し、平口に有利に働くとの見方はどの陣営にも共通している。野党各党は終盤戦の23、24日に党幹部を広島市内に投入し、てこ入れを図る。(敬称略)
中国新聞社