『呪術廻戦』“偽”夏油は「史上最悪の術師」 総力戦の中“脹相お兄ちゃん”が微笑ましい
ついに、“偽”夏油の正体が明らかとなった。『呪術廻戦』第46話「変身-弐-」は、多くのキャラクターが登場し、クライマックスらしい総力戦となった。 【写真】「赤い光を目に宿す」ついに戦いに参加したパンダ 原作以上に尺を使って虎杖悠仁と真人の因縁の対決がドラマティックに描かれた前回。渋谷の街は荒廃し見る影もない状況が決闘の激しさを物語っている。2人の対決は真人の敗北という結果で決着がついたが、そこに「助けてあげようか、真人」と“偽”夏油が姿を現した。 この時点では夏油傑本人ではないこと、そして夏油ではない何者かが夏油の身体を操っていることが分かっているが、その正体は明かされていない。ここで初めて“偽”夏油と対面した虎杖だったが、これまで集約された情報から五条悟を封印した張本人であることを察し立ち向かう。しかし、“偽”夏油の呪霊操術に圧倒的な力の差を見せつけられる。 ここからは“偽”夏油による「極ノ番」の説明シーンが続くが、アニメでもカットされることなく丁寧に描いていた。「極ノ番」とは、呪術師、準1級以上の呪霊が扱う生得術式を用いた技のうち領域展開を除いた奥義であると説明されている。心の中の世界である生得領域を前提とする領域展開とは異なり、同じ術式であれば術者は問わないものである。 “偽”夏油の極ノ番「うずまき」は取り込んだ呪霊たちを1つにまとめて超高密度の呪力を放つものであるが、呪霊操術の強みである手数の多さを捨てることになるため、“偽”夏油は好んで使用してこなかった。だが、ここで準1級以上の呪霊を「うずまき」に使用することで術式の抽出が起こる。“偽”夏油はこのことを真価と表現している。原作では文字の字面で追うことができるため容易に理解できるが、アニメから入った視聴者は理解が追いつかなかったのではないか。だが、ここでは真人が“偽”夏油に取り込まれていることからも、おそらくは真人の術式を使用可能になった、と理解できるだろう。 さて、ここにきて呪術高専京都校の西宮桃、加茂憲紀、三輪霞、禪院真依らが本格的に登場。渋谷事変では出番がなかったといってもいいほどに極端に登場シーンが少なかったが、“偽”夏油相手への攻撃、特にシン・陰流を放つ三輪を演じる赤﨑千夏の魂のこもったセリフと、アニメーションが素晴らしかった。さらにあれだけ戦いごとを嫌がっていた日下部篤也とパンダも加わり、いよいよ総力戦の様相を呈してきた。 脹相が登場し、“偽”夏油が「史上最悪の術師」であり、呪胎九相図の制作者でもある加茂憲倫であることが明らかとなる。弟たちのことを思いながら「全力でお兄ちゃんを遂行する!」と“偽”夏油に立ち向かう脹相がカッコいい。「渋谷事変」での虎杖との戦闘シーンを始め、弟との記憶のシーンにアニオリが追加されているところを見ると、脹相というキャラクターを制作陣がいかに大切にしているのかが伝わってくる。 脹相と“偽”夏油が争っている間に、虎杖たちは五条の救出を目論むが、そこに裏梅が立ちはだかる。謎に包まれていた裏梅だが、この「渋谷事変」でかつて宿儺の側近であったことが明かされ、現在は“偽”夏油と協力関係を結んでいる。加茂や日下部のセリフからも分かるように、かなり手強い呪詛師の一人。作中のシリアスなシーンではあるのだが、「俺はお兄ちゃんだ」(脹相)、「真面目にやってくんねーかなぁ!」(虎杖)という兄弟の会話が微笑ましい。 最後には九十九由基が虎杖たちのピンチに駆けつけた。“偽”夏油には直接的には関係していないが、九十九はかつて夏油が呪詛師の道へと進むきっかけを作った人物。“偽”夏油の表情を見るに、過去の記憶はあるようだ。いよいよ次回が渋谷事変の最終回。どのような結末が待っているのか、楽しみに見届けたい。
川崎龍也