政府が大企業と連携してベンチャー促進、日本のベンチャー支援ってどうなってる?
政府は6月にとりまとめる成長戦略にベンチャー支援策を盛り込む方針です。安倍首相は昨年、米国での講演において「日本を米国のようにベンチャー精神あふれる起業大国にする」というかなり大胆な発言を行っています。果たして日本にベンチャー企業は根付くのでしょうか。 現在、日本の起業環境は世界でも最低レベルといわれています。国際的な起業家精神に関する調査(GEM)では、日本の起業活動指数は調査対象18カ国のうち最低ランクになっています。また身近に起業した人を知っていると回答した人は、先進国の平均が30.9%なのに対して、日本ではわずか14.0%。起業に必要な知識や能力があるかと回答した人は、先進国では38.3%でしたが、日本ではわずか9.0%でした。 実はこの問題は20年以上も前から指摘されており、経済産業省を中心に様々なベンチャー振興策が計画、実施されてきたのですが、ほとんど成果を上げていません。 当初、日本においてベンチャー企業の活動が低調なのは、ベンチャー企業への投資資金が不足していることが原因と認識されてきました。このためベンチャー・キャピタルのファンドを整備するための法律を作ったり、国が予算を付けて投資ファンドに出資するなどの措置が取られましたが、状況はあまり変わりませんでした。 起業家からは、日本では資金調達ではなく製品やサービスの販売に大きなカベが存在するとの意見が多く聞かれます。つまり日本の大企業が保守的で、ベンチャー企業が提供する製品やサービスを「前例がない」という理由で採用せず、ビジネスが展開しにくいというものです。 これはデータにも表れており、大企業において革新的な事業を手がける割合は、米国や中国の企業の6分の1程度しかありません。つまり、いくらベンチャー企業が革新的な製品やサービスを開発しても、それを購入し、利用する大企業が存在していないのです。 こうした状況を受け、今回のベンチャー支援策では、大企業とベンチャー企業が交流する場を提供し、ベンチャー企業から刺激を受けた大企業がイノベーションに取り組めるよう環境を整備するとしています。しかし、大企業がベンチャー企業の技術や製品を採用しないのは、相互に交流がなかったからではなく、革新的な事業をしなくても済む、ぬるま湯的な市場環境が大きく影響していると考えられます。6月にまとめる成長戦略には、経営体質強化のためのコーポレートガバナンス支援策も盛り込まれる予定です。日本において本気でベンチャー・ビジネスを発展させようと思うのであれば、こうした大企業の競争を促す政策の方がずっと重要なのかもしれません。