【スト6】ときど優勝の秘訣は週7のオフライン対戦!? 「CPT2024 Sプレミア ジャパン」レポート
11月2~3日、武蔵野の森 総合スポーツプラザにおいて、プレイステーション 5/プレイステーション 4/Xbox Series X|S/PC用対戦格闘ゲーム「ストリートファイター6」における公式大会「CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER JAPAN」が開催された。主催はJCGで、特別協賛は京王電鉄。 【画像】初日のMC担当、実況はアール氏。解説にはハメコ。氏とふりーだ氏が務めた 大会は個人戦トーナメントで進行。TOP16までは2本先取のダブルイルミネーション方式で行なわれ、1度負けた場合であってもLosers側で再度チャンスがある。TOP8からは全試合が配信台で行なわれ、勝利条件も3本先取へと変更になる。 総参加人数1,248人の中から上位2名のみが2025年3月に両国国技館で行なわれる、カプコン公式世界大会「CAPCOM CUP 11」への出場権が獲得できるが、既報の通り、優勝はときど選手、準優勝は韓国のLeshar選手となり、この2人がCAPCOM CUP 11への出場権を獲得した。 本稿では大会全体を通しての雰囲気や様子などについて語っていきたい。 ■ オフライン対戦会も併設された賑やかな大会! 2日間かけて開催された今回の「CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER JAPAN」だが、初日の11月2日の段階で1,248人から128人まで絞り、11月3日はここから決勝戦までを1日で執り行なう流れだった。「ストリートファイター6」も発売から1年半近くが経過しており、参加者のレベルも全体的にかなり上がっており、初日を突破するだけでもかなり困難だったようだ。加えて上位2名が世界大会に出場できる事もあってか、海外からの参加選手も非常に多く見られた。 また、普段からオフライン対戦会などを各地で展開しているFighters Crossoverも主催のJCGに協力しており、会場ではFighters Crossoverによるオフライン対戦会も並行して行なわれていた。こちらは入場者であれば誰でも参加できるため、大会参加者に混ざって多くの観客たちが「ストリートファイター6」の対戦を楽しんでいたほか、Fighters Crossover主催のイベントも多く行なわれていた。 観戦目的の客も一緒になってゲームを楽しめるというのは格闘ゲーム以外の大会においてはあまり見られない光景で、正に格闘ゲームならではの醍醐味と言えるが、Fighters Crossoverが運営協力したことで、会場はまるでお祭りのような雰囲気となっていたのが印象的だ。 本大会では全ての試合においてゲーミングPCが使用されていたのも大きな特徴と言える。オフライン開催の大会においてPCが使用されるのは珍しく、通常こうした大会では運営側が管理しやすいゲーム機が使われる事が多いのだが、最適な環境で大会を行ないたいという主催側のこだわりが感じられた。 マウスコンピューターのゲーミングPCブランド「G-TUNE」のほか、日本HPのゲーミングPCブランド「OMEN」、サードウェーブの「GALLERIA」、TSUKUMOのゲーミングPCブランド「G-GEAR」などが協賛し、各社のゲーミングPCが大会にて使用されていた。 なお、会場の様子や試合の内容などはライブ配信されており、アーカイブも公開されているので、いつでも視聴が可能だ。気になる人は是非動画でも確認してみてほしい。 ■ TOP8メンバーには大奮闘のベテランたちが進出! 大会の参加にはプロアマの区別はないため、初日の予選会場には非常に多くのアマチュアプレーヤーや、普段はオンラインでしか見かけないようなアマチュアの強豪プレーヤーが多く集まったほか、プロ格闘ゲームプレーヤーたちも混ざって激闘を展開した。 予選初日は5試合を勝ち続けることで2日目のTOP128への進出が確定する。また1敗した場合であっても、Losers側で勝利することで2日目への希望が繋ぎとめられる。2先のトーナメントではかなりの番狂わせが起こるし、マッチングの運が悪ければ序盤から強豪と衝突してしまう事もあるため、プロプレーヤーであっても、上位入賞は非常に難しいのが現実だ。とは言うものの、プロプレーヤーの多くはそんな苦難を乗り越えて、初日は突破している選手がほとんどであり、名だたる選手たちの多くが2日目のTOP128までは駒を進めていた。 翌2日目に行なわれたTOP128については、もう誰が残っても負けてもおかしくない、そんな激闘が各所で展開した。本大会では何組か厳選して配信が行なわれたが、TOP8までの組み合わせについては、並行して試合が行なわれていたため、多くのプレーヤーが配信される事なく、トーナメントから姿を消す事となった。 こうして残ったTOP16のプレーヤーの中で負けなしのWinnersで勝ち上がってきたのが、DFM所属のまちゃぼー選手、FAV所属りゅうきち選手、VARREL所属のマゴ選手、Good 8 Squad所属のガチくん選手、DRX所属のLeshar選手、忍ism Gaming所属のももち選手、BEAST所属のふ~ど選手、REJECT所属のときど選手の8名となった。 Losersについては、海外からMOUZ所属のEndingWalker選手、忍ism Gaming所属の藤村選手、SETOUCHI SPARKS所属のばっさー選手、エヴァ:e所属のひかる選手、NORTHEPTION所属のオニキ選手、REJECT所属の鶏めし選手、無所属のts選手、海外からKSG所属のXiaohai選手の8名となった。 海外の公式大会などでも多くの日本人プレーヤーが現地に飛んで参加する場合もあるが、やはりホームの日本開催の公式大会だけあって、海外の選手はこの段階でEnding Walker選手、Leshar選手、Xiaohai選手の3名のみが上位に食い込んできた流れだ。 ここからさらに激闘の末、TOP8が決定。Winnersサイドはまちゃぼー選手(豪鬼)とマゴ選手(ジュリ)、ももち選手(エド)とときど選手(ケン)、Losersサイドにはふ~ど選手(エド)とLeshar選手(エド)、ガチくん選手(ラシード)とりゅうきち選手(ケン)が残る運びとなった。 こうしてTOP8の選手を見ていると、Leshar選手を除く7名が、過去の「ストリートファイター」シリーズ大会などにおいて名を馳せたベテランばかりとなった。加えてTOP8に残った8名の選手が全員、毎年開催されている、チームによるリーグ戦「ストリートファイターリーグ:Pro-JP(SFL)」に参加する選手ばかりだ。 ■ CAPCOM CUP 11出場を賭けた熾烈な争いが勃発! TOP8初戦はまちゃぼー選手の豪鬼とマゴ選手のジュリによる一戦。約半年前には同じチームだった2人だが、まちゃぼー選手はDFMへと移籍する流れもあり、いきなりエモい組み合わせだ。結果はまちゃぼー選手の豪鬼が堅実な立ち回りでマゴ選手のジュリを3-1で撃退してWinnersの決勝に駒を進めた。 次の試合はももち選手のエドとときど選手のケンによる一戦。どちらもリーグのリーダーとしてチームを率いる立場のベテラン対決だが、ここはときど選手のケンがももち選手のエドをしっかり押さえ込んで3-1で勝利。Winnersの決勝に進んだ。 Losers側の初戦はふ~ど選手のエドとLeshar選手のエドによる、同キャラ対決のミラーマッチとなったが、ここはLeshar選手が3-1で勝ち上がる展開となった。Losers側の2戦目はガチくん選手のラシードとりゅうきち選手のケンの一戦。2人とも同じ広島出身で仲の良い2人だが、ここはガチくん選手のラシードがきっちり対応して3-1で勝ち上がった。 続いては先ほどWinnersにて敗れたマゴ選手のジュリとLeshar選手のエドによる一戦。マゴ選手自身、手応えのある試合ができたと自身の配信などで語っており、Leshar選手をかなり苦しめたが、最終的にはLeshar選手が3-2で勝利して、次へと進んだ。同様にWinnersにて敗れたももち選手のエドはガチくん選手のラシードと対戦。こちらも肉薄したギリギリの勝負が展開したが、最後はガチくん選手が3-2で勝ち切った。 先ほど勝利したガチくん選手はステージ上で小休止を挟みつつも、間髪入れずにLeshar選手のエドとの一戦が行なわれた。ここはガチくん選手のラシードによる果敢な攻めに対して、深追いせずに反撃を狙う慎重な立ち回りを見せたLeshar選手のエドが3-1で勝利して、Losers Finalへの進出を決めた。 そして続いてはいよいよ、Winnersサイドの決勝となるWinners Finalが開始となった。まちゃぼー選手の豪鬼とときど選手のケンによる一戦は、勝利した選手がCAPCOM CUP 11の出場資格を得られる非常に重要な一戦だ。試合は常に互角以上の接戦が展開するも、お互いの体力が減ってきたところでの駆け引きでときど選手が常にまちゃぼー選手を上回る読みの深さを見せ、ギリギリの攻防ながらも試合が終わってみれば3-0でときど選手が勝利! Grand Finalへの進出を決めるとともに、CAPCOM CUP 11の出場権の1枠を獲得した! 続いては、先ほど惜しくも敗れたまちゃぼー選手がLosers Finalにて、勝ち上がってきたLeshar選手と対戦する。ここでの勝者がGrand Finalで待ち構えるときど選手と最後の対決に挑むことができると同時に、本大会においてはここでの勝者がCAPCOM CUP 11の出場権を獲得できる重要な一戦となる。 的確な波動拳や昇龍拳による対空など、立ち回りでは五分の展開を見せるが、まちゃぼー選手の豪鬼が放つ波動拳に対して、Leshar選手のエドが見せるフリッカーを使った飛ぶ道具を抜けてくる攻撃が要所にてうまく決まることで、勝利を積み重ねていき、最後は慎重な立ち回りを見せておきながら、攻めを続けるまちゃぼー選手に逆にクリティカルアーツ「サイコチェンバー」をお見舞いして3-1でLeshar選手のエドが勝負を決めた! Leshar選手はLosersサイドを勝ち抜けて、ついにGrand Finalへの進出を決めると同時に、CAPCOM CUP 11の出場権を獲得したのであった。 ■ 同じ釜の飯を食った2人が最終決戦! Grand Finalで頂点を争うのはときど選手のケンとLeshar選手のエドの一戦となった。2人とも現在はともにSFLにて、同じYogibo REJECTチームのメンバーとして練習を行なう2人だが、この2人がカプコン公式大会のGrand Finalで頂点を争うというのはかなりのエモい展開だ。 チームを組んでから半年弱、切磋琢磨してきた2人の試合は、蓋を開けてみると、ときど選手のケンの攻めが次から次へと見事に決まる怒涛の展開となる。ここまで慎重で堅実な守りを見せてきたはずのLeshar選手のエドが、面白いように崩されていき、ときど選手が文字通りあっという間に2連勝をもぎ取ってしまう。 3戦目こそ意地を見せて1戦取り返すLeshar選手だったが、最後も怒涛の攻めを繰り返し、Leshar選手のエドによる反撃のSA3を喰らっても物ともせず、インパクトなどを駆使してとにかく怒涛の攻めを繰り返したときど選手のケンが最後は押し切るような展開で勝利。「CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER JAPAN」の優勝はときど選手となった。 ■ 週7のオフライン練習と時差なしでの参加が勝利の鍵? 大会を終えて全ての配信が終了したあと、Grand Finalで戦ったときど選手とLeshar選手の2人から直接話を聞ける機会が頂けたので、他誌合同にてインタビューした内容について、ここで紹介したい。 先ずは「CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER JAPAN」の優勝について率直な感想を尋ねると、ときど選手は笑顔で「正直、今回は本当に自信がなかったので、それが逆に変な緊張とかなしに、やるしかないなって感じでやれたのかなと。CAPCOM CUPも5年くらい出ていなかったので、それを決められて本当に嬉しいですね」と率直な感想を語ってくれた。 Leshar選手は「ときどさんと一緒にCAPCOM CUP 11に出られるのは本当に嬉しいです。ときどさんは僕が格闘ゲームを始めた理由かもしれないくらい昔から1番尊敬するプレーヤーですから、そんな彼と一緒にいけるのは本当に嬉しいです」と笑顔で語った。 「ストリートファイター」は6から始めたというLeshar選手にオフライン大会での感想を尋ねると「僕にとってはとてもいい体験でした。人も多くて、色々な人と話ができて、色々なことを学べてとてもよかったです」と率直なコメントを返した。 ときど選手は、2024年から新たにREJECTの選手としてSFLに参加する事を決めた。そしてチームメンバーを集める際に韓国のLeshar選手をスカウトした。そんなLeshar選手と毎日練習している事が、今回の優勝に繋がったかについて聞かれると「毎日オフラインで顔を合わせて、時にはお互いオンラインでやりつつも、週7で本当に毎日切磋琢磨してやっているので、それがこういう結果で示されたというのは、これからの取り組みの自信にもなりますし、そういう場所を提供してもらっているREJECTのサポート体制はやっぱり強力なんだと今回改めて感じさせられましたので、引き続き、よりよい練習方法を取り入れてやっていければ、国技館(CAPCOM CUP 11の開催地)でもいい成績が出せるんじゃないかと思います」とコメントし、新たにREJECTのチームとして取り組んできた練習が実を結んだ事を強調した。 Leshar選手もこれに同意する形で「去年は家でランクマッチだけで練習していましたが、今はときどさんのアドバイスなどもあるし、チームのオフィスの環境もいいので、今年が一番いい状態ですね。多分来年以降は今年よりよくないと思います」と冗談を交えて語ってくれた。 本大会が全試合PCを使用した点についてプレイする選手側の目線でどうだったか確認すると、ときど選手は「実は初日の試合ではなんかラグかったりとか色々と問題があって大変そうにしていましたけどね。僕らは普段PCで練習しているので、できる限り僕らが普段練習している環境でやっていただけると、それはとてもありがたいですよね」とし、普段と同じ環境で試合が行なえた点について感謝の言葉を述べた。 加えて「1日目の問題で得た教訓や、原因については翌日までに改善して頂けたようで、2日目になったら、僕的にはかなりいい状態で全試合プレイできたと思うので、引き続きこの規模でやるのは大変だと思うんですけど、プレーヤーも頑張ってますし、運営の方にももっともっとよくして頂いて、胸を張って競技やってんだぞって社会に言えるような物を作り上げていけると、プレーヤーとしてもいいですし、『ストリートファイター』としてもいいのかなと思います」と格闘ゲーム業界全体の未来を考えているときど選手らしいコメントを残した。 Leshar選手にも聞いてみると「僕はモニターがよければゲーム機を使用してもあまりラグは出ないんじゃないかと思います。PCの場合だと、全部同じPCで揃えるのは難しいから全てが同じ環境で揃えられるゲーム機でもいいと思っています」と少し切り口の異なる意見を語ってくれた。 最後にCAPCOM CUP 11に向けての意気込みについて、ときど選手は「しばらく(CAPCOM CUPに)出られなくて、悔しい思いをしてきた中で、今年ついに初めての日本開催で優勝を決められて参加を決められたというのは、やっぱり自分は何か“持ってる”なっていうのが嬉しいですよね。ここまで来たからにはCAPCOM CUPも万全の体調で臨めるでしょうし、日本開催で時差もないので、みんなの度肝を抜くようなプレイをお見せしたいと思います」とした。時差の話について確認すると、「やっぱり時差がないのは大きいですよ。今年はオーストラリアの大会でも優勝したんですけど、あれね、時差がないのが結構影響していると思うんです。他の国々の方々には申し訳ないですけど、そこはホームの利をしっかり活かして挑んでいきたいです」とし、時差がなかった事も今回の優勝に起因している可能性について語った。 Leshar選手は「僕はアウェーでしたけどよかったです。CAPCOM CUPも頑張ります」と一言シンプルに冗談を言って締めくくった。なお、Leshar選手はオンラインで開催されるCPT World Warrior韓国に全て不参加な上に、参加資格条件が満たせなかったために、CPT World Warrior日本も不参加となっており、オフラインの大会でしか、CAPCOM CUPの参加権を勝ち取る方法はなかったが、今回ついに数少ないチャンスを物にして出場権を勝ち取ることができた。 ■ PCでの大会運用の重要性を再認識 以上、飛田給にある武蔵野の森 総合スポーツプラザにて2日間開催されたオフライン大会「CAPCOM Pro Tour 2024 SUPER PREMIER JAPAN」についてレポートした。激戦に次ぐ激戦の連続で、配信外の試合でも数多くのドラマや名勝負が生まれており、正にオフラインならではの魅力的な大会だ。 運営面で印象的だったのは、とにかく時間についてはかなりゆとりがあるタイムスケジュールとなっていた事だ。ブロックごとの試合が終わるたびに、長めの休憩時間が用意されており、選手たちもファンたちものんびりと試合を楽しむことができていた印象だ。加えて時間的な余裕があることから、プロプレーヤーたちのファンサービスも各所で見受けられ、これまで以上にファンとの交流が楽しめた大会になっていたようだ。 今回の大会を振り返ってみて、改めて印象的だったのは、冒頭でも触れたPCを使用した大会運営だ。2020年以前まではゲーム機が主流だったゲーム環境だが、配信するプレーヤーの増加やPCのパフォーマンスの向上などから、ゲームをプレイする際にゲーム機ではなく、ゲーミングPCを使用する人が近年非常に増えている。そんなプレーヤーサイドの事情を汲んだうえで、全試合でPCを使用する英断を下した主催のJCG及びFighters Crossoverの方々には改めて賞賛の言葉を送りたい。 一方でこうした大会でPCを使用する上で問題となるのが、PC固有のトラブルや調達の難易度だろう。加えてときど選手からも言及があったように、ラグなどのトラブルが発生して試合に影響が出るような事態が発生していたという話は各所で上がっていた。だが、今回の運営サイドはその日のうちに原因究明をした上で、大会2日目にはほぼ全てのトラブルを解消させ、万全の体制に仕上げて挑んでくるなど、アフターケアも万全だった点も絶賛に値するだろう。 PCを使用したゲーム大会の運営には課題もまだまだ多く残ると思われるが、ゲーミングPCを使用したPCによるゲームプレイ環境が当たり前となりつつある今だからこそ、今後もPCによる大会運営が増える事を願いたい。 (C)CAPCOM
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