改変が天才的で原作超え…最も成功した「長編小説の映画化」(4)泣く泣く出番を削られた原作の人気キャラは?
長編小説はしばしば映画の原作になるが、長大な物語をおよそ2時間の尺に収めるためには、知恵がいる。映画化にあたり、成功の鍵を握るのは、そうした工夫にあると言っても過言ではないだろう。そこで今回は、長編小説の改変に成功した実写化映画を5本セレクトして紹介する。第4回。(文・ばやし)
『ソロモンの偽証』(2015年)
監督:成島出 脚本:真辺克彦 原作:宮部みゆき 出演:藤野涼子、板垣瑞生、佐々木蔵之介、夏川結衣、永作博美、黒木華、小日向文世、尾野真千子 【作品内容】 クリスマスの朝、中学校の校庭で男子生徒が屋上から転落死した。警察は自殺と断定するが、さまざまな疑惑や推測が飛び交う。 遺体の第一発見者でクラスの委員を務めていた藤野涼子は、大人たちの身勝手な行動を目の当たりにして、自分たちの手で真実をつかもうと学校内裁判の開廷を決意する。 【注目ポイント】 過去には『模倣犯』(2002)や『理由』(2004)など、数々の名作が実写映像化された宮部みゆき。しかし、ときには何千ページにもわたって描かれる重厚なストーリーと、複雑に絡み合う人間ドラマを映画の短い尺で展開するのは困難を極める。 そんな宮部みゆき作品のなかでも、学園ミステリーの巨篇として名高い『ソロモンの偽証』の映画化は、当時も多くの人々を驚かせた。 文庫にして全6冊。3000ページ近い文章によって描かれるヒューマンミステリーを、映画『八日目の蝉』(2011)などで知られる成島監督は『前編・事件』と『後編・法廷』にわたって描いている。 映画化にあたってのアレンジで特に顕著だったのは、主要な登場人物に対するスポットライトの当て方である。 映画版では、物語の主軸となる藤野が、原作では接点のなかった柏木にいじめを見て見ぬふりしたところを問いただされるシーンが追加されている。さらに、20年後に教師となった藤野の回想で過去の事件が語られる形式が映画ではとられており、彼女の視点から物語が整理されていく。 逆に、原作では裏主人公とも言える活躍を魅せていた野田健一は、サブキャラクターの1人におさまっており、死体の第一発見者としての立ち位置も藤野と折半されている。ただ、大幅にカットされている野田一家のエピソードは原作でも大きなトピックなので、映画を見終えたあとは、ぜひ彼の事件に対する心境と裁判までの葛藤を読んで目の当たりにしてほしい。 (文・ばやし)
ばやし