「一強多弱」の国会、野党の選挙協力はなぜ必要か? 秋山訓子
臨時国会が始まっています。野党の党首たちは国会論戦で連携して安倍政権と向かい合っていくことを確認しました。ただ、選挙協力に向けてはなかなか壁も高そうです。野党はなぜ選挙協力が必要なのか、協力するとどんなことが可能になるのか、そのハードルは何かについて説明しましょう。 そもそもなぜ野党の選挙協力が必要なのでしょうか。 答えは簡単、与党に勝って政権を取るため、です。 日本では、衆院での多数勢力から首相を出し、内閣をつくって与党と協力し合って政権を運営していきます。その多数をとるためには、野党がたくさんあったら一大勢力を作り出すのは難しい。野党をたしあげて与党に数で勝れば与野党勢力逆転、政権奪取となるわけですが、そのためには野党同士で戦うのはできるだけ避けた方が効率がよい、ともいえるわけです。 いくつかの実例をみてみましょう。 たとえば、2007年の参院選。民主党をはじめとする野党がここで大きく伸びて参院で与野党が逆転、いわゆる「ねじれ」が生じ、2009年の政権交代へとつながりました。この参院選の島根選挙区では国民新党(当時)の亀井亜紀子さんが自民党の候補を下しています。民主党は出ておらず、民・国の協力があったからこそ勝てたといっていいでしょう。 ただ、選挙にはそのときの風やムードももちろん影響します。島根選挙区のその次の参院選、2010年は民主とみんな、両方の候補が出ています。そして共倒れ。自民党の候補が勝っています。野党の選挙協力がうまくいかなかったわけですが、民主とみんなをたしても、当選した自民候補の数には及びません。さらに2013年の参院選では、国民新党からみどりの風に変わった亀井亜紀子さんは、民主党から候補が出ていないのにもかかわらず自民党に敗れています。
衆院も見てみましょう。前回2012年の小選挙区、近畿地方では維新の会から多くの候補が出て、同じく野党の民主党と軒並みぶつかっています。維新が自民、民主に勝ったところもあれば(こういう選挙区はとても多い)、民主と維新どちらも自民候補の前に敗れ去ったところもあります(たとえば大阪7区や滋賀1区)。こちらも、もし野党統一候補が出ていれば自民党に勝てた可能性もあるわけです。実際、大阪7区も滋賀1区も、単純に民主と維新の票をたせば、自民の票を上回ってはいます。 現在、衆院の295ある選挙区のうち、共産党をのぞく野党の候補者が競合しているのは50ほどあるとみられています。特に東京や大阪で多いようです。 といっても、候補者調整は相当難しい。特に、一度戦ったことのある相手だと、みなさん一国一城の主、そう簡単に引き下がることはできません。一つの選挙区から二人以上当選している場合もあります。それに、協力が前提となれば、ではなぜそもそも別の政党なのか?ということにもなりかねません。 安易な選挙協力は、政党分裂の危機すらはらんでいます。そうなれば、政界再編というまた別の展開が待っているのです。 ---------------- 秋山訓子(あきやま・のりこ) 朝日新聞政治部次長。朝日新聞入社後、政治部、経済部、AERA編集部などを経て現職。著書に「ゆっくりやさしく社会を変える」