プーチン露大統領が5期目の組閣に着手 閣僚変更は小幅か、国防・治安系は権力闘争の兆し
通算5期目に入ったロシアのプーチン大統領が新政府の組閣に着手した。プーチン氏は、ウクライナ侵略に伴う対露制裁の影響を最小限に食い止めたとして前政府を評価しており、大幅な人事刷新は回避する見通し。ただ国防・治安系の省庁を巡っては、4月下旬にイワノフ国防次官(当時)が拘束されるなど権力闘争の兆候もあり、幹部人事が注視されている。 【写真】ロシア軍の超音速戦略爆撃機「ツポレフ22M3」 ■GDP3・6%増 前首相を評価 プーチン氏の5期目就任を受け、前政府は憲法規定に従って7日に解散。プーチン氏は10日、ミシュスチン前首相を再任させる人事案を下院に提出し、承認された。 国際通貨基金(IMF)によると、露国内総生産(GDP)はウクライナに侵攻した2022年に前年比1・2%減、23年は3・6%増だった。軍需急拡大に牽引(けんいん)されている側面が大きいが、国内産業への金融支援や、制裁に参加していない国々との貿易拡大などミシュスチン氏らの手腕も評価されている。 ■ラブロフ氏は高齢がネック 露オンラインメディア大手「フォンタンカ」によると、前財務相のシルアノフ氏や前副首相兼産業貿易相のマントゥロフ氏、前副首相(エネルギー担当)のノバク氏らは再任の見通し。前第1副首相のベロウソフ氏は退任し、後任にパトルシェフ国家安全保障会議書記の息子、ドミトリー・パトルシェフ前農相が起用される可能性がある。 外相や国防相、内相らは大統領が上院と協議して任命する。他の閣僚や副首相はミシュスチンが選定する。 約20年間にわたって外相を務めてきたラブロフ氏は74歳という高齢がネック。だが、外交路線を維持する観点から、少なくとも11月の米大統領選まで留任するとの予測をフォンタンカは伝えた。 ■ショイグ氏に「深刻な打撃」 国防・治安系では国防相を務めてきたショイグ氏の処遇が焦点だ。 4月下旬にはショイグ氏側近のイワノフ次官が収賄容疑で連邦捜査委員会に拘束された。ショイグ氏は昨年、民間軍事会社を率いるプリゴジン氏の反乱が失敗したのを機に、反対派を排除して影響力を固めたとみられていた。 露政治学者のミンチェンコ氏は地元メディアに「イワノフ氏の拘束はショイグ氏にとって深刻な打撃となる」と指摘。その一方、ショイグ氏にはウクライナ軍の反攻撃退や露軍の砲弾不足解消といった功績があるとも説明した。
フォンタンカも「露軍が前線で優勢にある以上、ショイグ氏は再任される可能性が高い」との見方を伝えた。