【GW特集 Netflix独占配信の話題作】ド直球勝負!『スター・ウォーズ』×『七人の侍』のSFスペクタクル『REBEL MOON ― パート2: 傷跡を刻む者』
天気に恵まれた2024年GWいかがお過ごしでしょうか。ご旅行におでかけされる方はちょっとしたすき間時間に映画を、お家でゆっくりお過ごしの方はドラマシリーズを、この機会にNetflixで一気見してみませんか?
ザック・スナイダーによる渾身の新ユニバース第2弾『REBEL MOON ― パート2: 傷跡を刻む者』がいよいよ登場だ。2023年12月の『パート1: 炎の子』に続き、スナイダーが長年あたためてきたSFスペクタクルがひとつめの区切りを迎える。 物語の舞台は、巨大銀河帝国・マザーワールドが宇宙を制する時代。帝国の支配を受けない衛星・ヴェルトが、ノーブル提督(エド・スクライン)の帝国軍に制圧されたことから、元帝国軍の戦士・コラ(ソフィア・ブテラ)は、愛する人々を救うため反乱を決意。仲間を集めてノーブル提督を倒したが、死んだと思われていた提督は帝国の技術により一命をとりとめていた。平和になったかと思われたのもつかの間、コラと仲間たちは数日後に帝国軍がヴェルトにやってくることを知り、人びとと協力しながら撃退作戦を計画する。 DCユニバース作品や『ウォッチメン』(2009)など多数のスーパーヒーロー映画を手がけてきたスナイダーは、もともと『スター・ウォーズ』(1977)と黒澤明監督『七人の侍』(1954)にインスパイアされて本作のアイデアを構想した。今回の「故郷の村に現れる悪党たちを、少数の戦士と村人たちが撃退する」ストーリーは、もはや何のオブラートにも包まない、ド直球の『七人の侍』ぶりである。 『パート1: 炎の子』配信時、筆者によるインタビューで「この映画は、僕の映画言語や美学を育ててくれたあらゆる作品へのラブレター。自分の映画哲学をまとめたもの」と語ってくれたスナイダー。もちろん『パート2: 傷跡を刻む者』でもその精神は健在で、アクションにとどまらず、自然豊かな風景から、ヴェルトの人びとが穀物を収穫する営みを撮るところまで、自らの映像美学をこれでもかと詰めこんでいる。 ただし本作の前半は、『パート1: 炎の子』で描ききれなかったキャラクターの過去を補完する会話劇。帝国軍とノーブル提督が再びヴェルトを訪れる後半になると、再び物語がダイナミックに動き出し、スナイダーの“らしさ”が炸裂する。大勢の登場人物たちが入り乱れる地上戦や、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』(2016)を思い出すような展開が、彼らしいアクションとユーモアによって綴られてゆくのだ。 そしてなによりも本作のキモは、『スター・ウォーズ』×『七人の侍』なスペクタクルでありながら、同時に「自分の生まれ育った環境から真に逃れることの困難さ」を描いたミニマムな物語でもあるところ。古くから自分の中に刷り込まれている“権力”の磁場から、自分ひとりの力で脱出することは本当に難しい――ならば、いったい何がその恐怖から人間を解放してくれるのか? ちなみに共同脚本のカート・ジョンスタッドによれば、『REBEL MOON』は前後編×3部作の全6作構想だという。製作のゴーサインは出ていないものの、スナイダーのなかにはまだまだ新しい物語があるようだ。
文 / 稲垣貴俊