今季12勝目の中日・高橋宏斗、今季の初被弾を許したのは令和の三冠王「あれだけ努力をする選手にこの球を投げたら打たれる」
◇10日 中日3―1ヤクルト(バンテリン) 中日・高橋宏斗投手(22)は10日、ヤクルト戦(バンテリンドームナゴヤ)に先発し8イニング1失点で12勝目を挙げた。今季被本塁打ゼロを続けるなか、村上にソロを浴びて快記録を逃したが、危なげない投球で防御率1点台前半をキープした。 80年ぶりの偉業は逃しても、高橋宏の勢いは止まらなかった。8イニングを5安打、1失点。「後半はしっかり修正できました」。圧巻の107球で、リーグ2位タイの今季12勝目(3敗)を挙げた。 序盤から落ち着いていた。最速155キロの直球を軸にヤクルト打線からアウトを積み重ねていった。ただ4回、先頭・村上に1ストライクから投じたカットボールを右翼席へ放り込まれた。今季510人目にして許した初被弾。だが「ホームランの後、引きずらずに投げられたのでよかった」。すぐに前を向くと、以降は三塁を踏ませないピッチングで8回まで投げきった。 1リーグ制だった1944年を最後に出ていないシーズン被弾0の大記録は途絶えたが、「村上さんに完璧に打たれたので、文句はないというかすがすがしいです」と右腕。そう語る理由がある。高橋宏の脳裏をよぎるのは、昨春ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。歓喜の裏で光を求めてもがいていた令和の三冠王の姿を見たからだ。 米国・マイアミでの準決勝メキシコ戦では逆転サヨナラ打、決勝の米国戦では同点弾を放った村上。だが日本で開催されていた一次ラウンドでは、14打数2安打と苦しんでいた。 どん底にいるときこそ、その人の真価が問われる。宿泊先のホテルで村上と同じフロアだった高橋宏。「いつも部屋の前にバットが置いてありました。日を追うごとにだんだん増えていって。あらゆるものを試して、何とかしようとしていた。あれだけの努力をする選手。この球を投げたら打たれる、というような一発でした」。打たれないに越したことはない。だが尊敬する打者に打たれたことで、すぐに切り替えられた。
中日スポーツ